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四念処経講話 第二版(新修)

作者:釈生如更新時間:2025年02月27日

第五章  法を観じて住す

第一節  五蓋の法を観じて住す

原文:然り。諸比丘よ。比丘は如何にして法において法を観じて住するか。ここに、諸比丘よ。比丘は法すなわち五蓋において、法を観じて住す。また諸比丘よ。比丘は如何にして法すなわち五蓋において法を観じて住するか。

釈:さて、諸比丘たちよ。比丘はどうやって法を観じ、心を法に住するのでしょうか。このように、諸比丘たちよ。比丘は五蓋の法を観じて、五蓋の法を観じる心に住するのです。では諸比丘たちよ。比丘はどのように五蓋の法を観じて、その観じる心に住するのでしょうか。

五蓋の法とは、貪欲・瞋恚・睡眠・掉悔・疑を含みます。これらの五蓋は観行によってのみ発見され、貪欲や瞋恚などの煩悩の現行を観察し、降伏させた後に初めて道に入り、五蓋を滅することができます。一切の法の修証における観行は極めて重要であり、四念処観は最も基礎的な観行です。基礎を固めてこそ、より深い観行を実践し、仏法の真髄を体得できるのです。

原文:ここに、諸比丘よ。比丘が内に貪欲ある時は、我が内に貪欲あることを知り。内に貪欲なき時は、我が内に貪欲なきことを知る。未だ生ぜざる貪欲の生起を知り、既に生じた貪欲の滅尽を知る。また既に滅尽した貪欲が、未来に再び生起せざることを知る。

釈:このように観行すべきです。諸比丘よ。比丘が内に貪欲の現象ある時は、自らの心に貪欲あることを知りなさい。内に貪欲なき時は、貪欲なきことを知りなさい。未だ生じざる貪欲が生起すれば、その生起を知りなさい。既に生じた貪欲が滅べば、その滅尽を知りなさい。滅尽した貪欲が未来に再生せざることも、知りなさい。

貪欲は無始以来の環境の影響によって深く根付いたものです。覚りのない者には、これらの現象が貪欲であり、法に背き生死の障りであると気付き難い。貪欲を観じるには、まずその相貌を識別し、禅定によって内観力を養い、常に心の動きを覚知せねばなりません。貪欲の相貌とは、愛着・執着・欲望・追求・渇望・執心などです。

貪欲の対象は三界の世俗法、特に欲界の財産・男女・名誉・地位・五感の対象などです。観行時は細心に一切の縁を検べ、心念をあるがままに知ることが肝要です。根本的な貪欲の滅尽は我見を断じ初禅に入って初めて可能となります。

原文:或いは内に瞋恚ある時は、我が内に瞋恚あることを知り。内に瞋恚なき時は、我が内に瞋恚なきことを知る。未だ生ぜざる瞋恚の生起を知り、既に生じた瞋恚の滅尽を知る。また既に滅尽した瞋恚が、未来に再び生起せざることを知る。

釈:比丘が瞋恚の蓋を観じる時、内に瞋恚あればそれを知り、なければなきを知ります。瞋恚の生起と滅尽を覚知し、その永久的な消滅を確認します。逆境において瞋恚を調伏するには、縁起の虚妄性を観じ、自己を呵責する必要があります。根本的な瞋恚の断除は、貪欲を断じた後の初禅において可能となります。

原文:或いは内に睡眠(愚鈍)ある時は、我が内に睡眠あることを知り。内に睡眠なき時は、我が内に睡眠なきことを知る。未だ生ぜざる睡眠の生起を知り、既に生じた睡眠の滅尽を知る。また既に滅尽した睡眠が、未来に再び生起せざることを知る。

釈:睡眠蓋は智慧を覆う障りです。その有無を観知し、減少させて心を清明に保ちます。精進によって次第に睡眠は減少し、道業が進展します。

原文:或いは内に掉悔ある時は、我が内に掉悔あることを知り。内に掉悔なき時は、我が内に掉悔なきことを知る。未だ生ぜざる掉悔の生起を知り、既に生じた掉悔の滅尽を知る。また既に滅尽した掉悔が、未来に再び生起せざることを知る。

釈:掉は心の散乱、悔は過去への執着です。これらを観知して禅定の障りを除きます。

原文:或いは内に疑惑ある時は、我が内に疑惑あることを知り。内に疑惑なき時は、我が内に疑惑なきことを知る。未だ生ぜざる疑惑の生起を知り、既に生じた疑惑の滅尽を知る。また既に滅尽した疑惑が、未来に再び生起せざることを知る。

釈:大小の疑惑を観知し、智慧によって次第に解決します。仏法の修学は疑惑を晴らす道です。

原文:かくの如く、或いは内法において法を観じて住し、或いは外法において法を観じて住し、或いは内外の法において法を観じて住す。或いは法の生起を観じて住し、或いは法の滅尽を観じて住し、或いは法の生滅を観じて住す。さらに智識によって形成され、憶念によって現前する法の思念あるも、何ものにも依らずに住し、世間のいかなるものにも執着せず。諸比丘よ。比丘はかくの如く五蓋の法を観じて住すのである。

釈:内外の五蓋を観じ、生滅を覚知しつつ、一切の執着を離れます。外五蓋は表面的な障り、内五蓋は無始の習気です。意根における根本的な断除こそ真の解決です。比丘たちよ、このように五蓋を観じて住しなさい。

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