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観行五蘊我見断ち(第二部) (思考過程を明示せず、要件通りタイトルのみ出力)

作者:釈生如更新時間:2025年02月26日

第九章 瑜伽師地論第二十九巻(四正勤) 

原文:如是於四念住。串習行故。已能除遣。粗粗顛倒。已能了達。善不善法。従此無間。於諸未生。惡不善法。為不生故。於諸已生。惡不善法。為令斷故。於其未生。一切善法。為令生故。於其已生。一切善法。為欲令住。令不忘失。廣説如前。乃至攝心持心。

釈:四念住を観行し熏習するが故に、最も粗浅な顛倒を除き遣うことができた。以前は身体を我と見て浄らかだと貪着していたが、今や身体が不浄で無我であることを知る。以前は苦を楽と見て覚受を貪り享受していたが、今やすべての受が苦であることを知る。以前は心が相続し常住であると考えていたが、今や心が無常であることを知る。以前は五蘊の世間法を我と見なしていたが、今や無我であることを知る。このように顛倒した知見を正し、心はもはや顛倒しない。

四念住を修習した後、善法と不善法を了達できるようになり、従って間断なく四正勤の修習に入る。未だ生じていない悪不善法を生じさせず、既に生じた悪不善法を断除し、未だ生じていない善法を生じさせ、既に生じた善法を保持して忘失させない。広く説けば前述の如く、四正勤の修習過程において心を摂持し保持することができる。

原文:云何名為。惡不善法。謂欲纏染污。身語意業。是身語意。惡行所攝。及能起彼。所有煩悩。若未和合。未現在前。説名未生。若已和合。已現在前。説名已生。

釈:悪不善法とは、貪欲に纏われ汚染された身業・口業・意業であり、これらは身悪行・口悪行・意悪行に属し、五陰七識のすべての煩悩を生起させるものである。もし身口意の悪不善業が未だ造作されず、悪不善行が現れていないならば、未生の悪不善行という。既に和合して生じ、悪不善行が現れたならば、已生の悪不善行という。

和合とは煩悩が縁と合うことを指す。煩悩が縁に遇えば悪不善業行が現れ、縁に遇わなければ煩悩は眠蔵したままである。悪業と不善業には軽重の差があり、悪行は煩悩が重く粗いことを示し、不善行は煩悩が軽く善悪の中間にある。不善行は広範に及び、悪行は耐え難い行為である。悪は煩悩が粗重で明らかであり、本来現れるべきでない故に人々に耐え難い。不善の煩悩は軽く、日常的に生じるため一定の許容がある。

衆生は悪不善法が多く善法が少ないため、不善を正常と見做す。しかし衆生は知らないが、世間の「正常」は全て異常であり、本来現れるべきでない。人々が不善を正常と見做すことは、衆生の心が清浄でないことを示す。悪不善法を許容すればするほど善法は減じる。衆生の許容と諸仏菩薩の許容は全く異なり、仏菩薩の許容は智慧と慈悲の現れであるが、衆生の許容は煩悩の現れである。悪不善行を指摘されても不快に思わず慚愧なき者は、修行から程遠い。

原文:云何名為一切善法。謂若彼對治。若蓋對治。若結對治。未生已生。應知如前。惡不善法。若時未生。惡不善法。先未和合。為令不生。發起希願。我當令彼。一切一切。皆不復生。是名於諸未生惡不善法。為不生故生欲。

釈:一切善法とは、悪法を対治する法であり、煩悩蓋障を対治し、煩悩結縛を対治するものである。未生・已生については前出の悪不善法と同様に知るべきである。悪不善法が未だ生起する因縁が具わらない時、生じさせぬよう希願を発起する。例えば嫉妬・盗み・妄語・殺生・人を陥れることなどを再び行わぬと誓願する。これを未生の悪不善法を生じさせぬ為の欲生起という。

原文:若時已生。惡不善法。先已和合。為令斷故。發起希願。我當於彼。一切一切。皆不忍受。斷滅除遣。是名於諸已生。惡不善法。為令斷故生欲。

釈:既に生じた悪不善法を断滅する為に、一切を容認せず断じ除く決意を発起する。これを已生の悪不善法を断ずる為の欲生起という。これらの誓願は自心の煩悩と悪果報を覚知した上での善願である。

原文:又彼一切。惡不善法。或縁過去事生。或縁未來事生。或縁現在事生。如是彼法。或縁不現見境。或縁現見境。若縁過去未來事境。是名縁不現見境。若縁現在事境。是名縁現見境。

釈:一切の悪不善法は過去・未来・現在の事象に縁って生じ、現前せざる境と現前する境に縁う。過去未来の境は不現見境、現在の境は現見境である。

原文:當知此中。於縁不現見境。惡不善法。其未生者。欲令不生。其已生者。欲令永斷。自策自勵。是名策勵。於縁現見境。惡不善法。其未生者。欲令不生。其已生者。欲令永斷。勇猛正勤。是名發勤精進。所以者何。要當堅固。自策自勵。勇猛正勤。方能令彼。或不復生。或永斷滅。

釈:不現見境に縁う悪不善法に対しては自らを鞭撻激励し(策励)、現見境に縁うものには勇猛に精進する(発勤精進)。堅固なる自策自励こそが悪不善法を断滅させる。

原文:又於下品中品諸纏。其未生者。欲令不生。其已生者。欲令永斷。故自策勵。於上品纏。其未生者。欲令不生。其已生者。欲令永斷。發勤精進。又若行於過去境界。如是行時。不令煩悩縁彼生起。設復失念。暫時生起。而不忍受。速能斷滅。除遣變吐。如縁過去。若行未來。當知亦爾。如是未生惡不善法。能令不生。生已能斷。是名策勵。

釈:下品・中品の煩悩には自策を、上品の煩悩には精進を用いる。過去未来の境に縁う時、正念を失えば速やかに断滅する。これが策励である。

原文:若行現在所縁境界。如是行時。不令煩悩縁彼生起。設復失念。暫時生起。而不忍受。速能斷滅。除遣變吐。如是未生。惡不善法。令其不生。已經生起,生已能斷。是名發勤精進。

釈:現前の境に縁う際、失念しても速やかに断じる。これが発勤精進である。四正勤を修すれば煩悩は除かれ、心清浄となり見道を得る。

原文:又或有惡不善法。唯由分別力生。非境界力。或有惡不善法。由分別力生。亦境界力。唯由分別力生。非境界力者。謂於住時。思惟過去未来境界。而生于彼。由思惟力生。亦境界力者。謂於行時。縁現在境界。而生于彼。當於爾時。決定亦有。非理分別。當知此中。惡不善法。唯由分別力生。非境界力者。彼若未生。能令不生。生已能斷。是名策勵。若由分別力生。亦境界力者。彼若未生。能令不生。生已能斷。是名發勤精進。

釈:悪不善法の生起には、分別力のみによるものと、分別力と境界力によるものがある。前者は策励で対治し、後者は発勤精進で対治する。

原文:於其未生。一切善法。為令生故生欲者。謂於未得。未現在前。所有善法。為欲令得。令現在前。發心希願。發起猛利。求獲得欲。求現前欲。而現在前。是名於其未生一切善法。為令生故生欲。

釈:未生の善法を生起させる為に、獲得を希求する猛利な欲を生起させる。

原文:於其已生。一切善法。為欲令住。令不忘失。令修圓滿生欲者。謂已獲得。已現在前。所有善法。是名已生善法。於此善法。已得不失。已得不退。依是説言。為欲令住。於此善法。明了現前。無闇鈍性。依是説言。令不忘失。於此善法。已得現前。數數修習。成滿究竟。依是説言。令修圓滿。於此善法。發心希願。發起猛利求。堅住欲求。不忘欲求。修滿欲而現在前。是名於其已生一切善法。為欲令住。令不忘失。令修圓滿生欲。

釈:已生の善法を堅住・不忘・圓満させる為の欲を生起させる。これには不放逸を修し、善法を防護する。

原文:策勵者。為於已得。令現前故。發勤精進者。為於未得。令其得故。又策勵者。於已生善。為欲令住。令不忘故。發勤精進者。令修滿故。又於下品中品善法。未生令生。生已令住。令不忘失。是名策勵。於上品善法。未生令生。生已乃至。令修圓滿。是名發勤精進。

釈:策励は已得の善法を現前させ、発勤精進は未得の善法を獲得する。下中品の善法には策励を、上品の善法には精進を用いる。

原文:言策心者。謂若心於修奢摩他一境性中。正勤方便。於諸未生。惡不善法。為令不生。廣説乃至。於其已生。一切善法。為欲令住。令不忘失。令修圓滿。由是因縁。其心於內。極略下劣。或恐下劣。觀見是已。爾時隨取一種。淨妙舉相。殷勤策勵。慶悦其心。是名策心。云何持心。謂修舉時。其心掉動。或恐掉動。觀見是已。爾時還復於內。略攝其心。修奢摩他。是名持心。

釈:策心とは、修止中に昏沈を観じた時、浄妙な相を挙げて心を激励すること。持心とは、掉挙を観じた時、心を収摂して止を修すること。

原文:如是四種。亦名正勝。謂於黒品諸法。其未生者。為令不生。其已生者。為令斷滅。生欲策勵。發勤精進。策心持心。是二正勝。於白品諸法。其未生者。為欲令生。如前黒品廣説。應知是二正勝。

釈:四種を正勝と名づく。黒品(不善)に対する二正勝と、白品(善)に対する二正勝がある。

原文:如是四種。亦名正斷。一名律儀斷。謂於已生。惡不善法。為令斷故。生欲策勵。乃至廣説。二名斷斷。謂於未生。惡不善法。為不生故。生欲策勵。乃至廣説。由於已生。惡不善事。應修律儀。令其斷滅。不應忍受。由是因縁。名律儀斷。於其未生。惡不善事。為欲令彼。不現行斷。為欲令彼。不現前斷。為斷故斷。故名斷斷。

釈:四正断とは、律儀断(已生不善を断)・断断(未生不善を防)・修断(未生善を生)・防護断(已生善を護)を指す。

原文:三名修斷。謂於未生一切善法。為令生故。廣説乃至。策心持心。由於善法。數修數習。先所未得。能令現前。能有所斷。故名修斷。四名防護斷。謂於已生。一切善法。為欲令住。廣説乃至。策心持心。由於已得。已現在前。諸善法中。遠離放逸。修不放逸。能令善法。住不忘失。修習圓滿。防護已生。所有善法。能有所斷故。名防護斷。

釈:修断は善法を生起させ、防護断は善法を保持する。四正勤は見道の前提条件である。

原文:如是廣辨。四正斷已。復云何知。此中略義。謂為顯示。於黒白品。捨取事中。増上意樂圓滿。及加行圓滿。是故宣説。四種正斷。當知此中。由生欲故。増上意樂圓滿。由自策勵。發勤精進。策心持心故。加行圓滿。

釈:四正断の要義は、善悪の取舍において意楽と加行を圓満することである。

原文:修瑜伽師。唯有爾所。正應作事。謂為斷滅。所應斷事。及為獲得。所應得事。先當生起。希願樂欲。為斷諸纏。復應時時。正勤修習。止舉捨相。為斷諸纏。及隨眠故。更應修集。對治善法。為現如是。一切所作。説四正勝。及四正斷。是名略義。

釈:瑜伽行者は、断ずべきを断じ、得るべきを得る為に、止観を修し善法を集める。これが四正断の略義である。

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