原文:かくのごとく我聞けり。一時、仏は舎衛国の祇樹給孤独園に住したまえり。その時、世尊は諸比丘に告げたまわく「四十四種の智あり。諦聴して善く思惟せよ。まさに汝らのために説かん。いずれを四十四種の智と為すや。すなわち老死智、老死集智、老死滅智、老死滅道跡智。かくのごとく生・有・取・愛・受・触・六入処・名色・識・行の智、行集智、行滅智、行滅道跡智。これを四十四種の智と名づく」と。仏この経を説きおわったまいしとき、諸比丘仏の説きたまうところを聞き、歓喜して奉行せり。
釈:世尊は諸比丘に告げたまわく「四十四種の智慧があり、汝らは仔細に聴聞し善く思惟すべし。我今まさに汝らに説かん。いずれが四十四種の智慧なるや。すなわち老死を如実に了知(実証)する智慧、老死集を如実に了知する智慧、老死滅を如実に了知する智慧、老死滅道跡を如実に了知する智慧なり。かくのごとく生を如実に了知する智慧、生集を如実に了知する智慧、生滅を如実に了知する智慧、生滅道跡を如実に了知する智慧。有を如実に了知する智慧、有集を如実に了知する智慧、有滅を如実に了知する智慧、有滅道跡を如実に了知する智慧。取を如実に了知する智慧、取集を如実に了知する智慧、取滅を如実に了知する智慧、取滅道跡を如実に了知する智慧。愛を如実に了知する智慧、愛集を如実に了知する智慧、愛滅を如実に了知する智慧、愛滅道跡を如実に了知する智慧。
受を如実に了知する智慧、受集を如実に了知する智慧、受滅を如実に了知する智慧、受滅道跡を如実に了知する智慧。触を如実に了知する智慧、触集を如実に了知する智慧、触滅を如実に了知する智慧、触滅道跡を如実に了知する智慧。六入処を如実に了知する智慧、六入処集を如実に了知する智慧、六入処滅を如実に了知する智慧、六入処滅道跡を如実に了知する智慧。名色を如実に了知する智慧、名色集を如実に了知する智慧、名色滅を如実に了知する智慧、名色滅道跡を如実に了知する智慧。識を如実に了知する智慧、識集を如実に了知する智慧、識滅を如実に了知する智慧、識滅道跡を如実に了知する智慧。行を如実に了知する智慧、行集を如実に了知する智慧、行滅を如実に了知する智慧、行滅道跡を如実に了知する智慧。これらを四十四種の了知すべき智慧と名づく。
これらの智慧はすべて十二因縁中の十一支縁起を実証する智慧を指す。実証せんと欲すれば、甚深な禅定において如理如実に観行し観照すべく、情思による解釈に堕してはならない。解った理は真実の作用なく、煩悩心を降伏せしめず、ましてや煩悩心を断ずることはできず、無明共存すれば生死輪廻は止むことなし。理を解するは一難きにあらず、難きは定中の観行にあり。定中に参究し、各支分の来龍去脈を明らかに参究し、種子を認識して各支分がすべて生死の結縛なることを明らかにすべし。これらすべてが苦であり空であり、我ならざるが故に、生死の連鎖を断ち切り、結縛を打開し断滅せしめ、自心を解脱自在ならしむるなり。
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