正法念処経の原文:いかにして盗みを楽しみ行い多く作す。いかにして楽しみ行い多く作す。盗みて已に地獄に堕つ。この悪戒の人は、性自ら盗みをなす。悪知識に近づく。もし悪知識の近くに住む人と彼と相随うならば、則ち盗みを行う。
下中上あり。何をか下となす。王法等を謂う。前に説くが如し。何をか中となす。福田に非ざる所、彼の物を盗む。この盗みを中となす。何をか上となす。仏法僧の物、微少なりと雖も盗む。是れ則ち上となす。
彼の仏法僧、もし僧物を盗めば、仏法は能く浄む。仏法の物を盗めば、僧は浄むこと能わず。もし衆僧の現に用いる食料品を盗めば、大地獄に堕ち、頭面下に在り。もし僧に属する常の食物を取れば、則ち無間阿鼻地獄に堕つ。広く闇なる等、重き福田を以て、微少の盗みをなす。心ある念いを以て、楽しみ行い多く作す。彼の少き盗みは、地獄・畜生・餓鬼に堕つ。もしまた懺悔し、随喜を生ぜず、心中に悔いを生ぜば、彼は定めて受くるところに非ず。もし盗人、無量の方便を以て盗みを行わば、是の如きを以て故に、盗みと名づく。
ここに盗みの最も重きは三宝の物を盗むことなり。盗みの業中この条最も重く、仏法僧三宝の物を盗む。所謂る盗むとは、三宝に属する物を、同意を得ず、自らの意に取り、己が物と為して自ら主張し用いるを謂う。仮令ほどの微少なる物と雖も、果報極めて重し。例えば紙巾・毛巾等の類、もしこれより貴重なる物を盗めば、果報更に重し。もし犯す者あれば、自ら方法を考え罪障を軽減すべし。常に寺院に往く人、自ら多く反省し、己に盗みの事あるや否やを検べ、蝿頭の利をも含む。
三宝に布施すれば無量の福を得るも、盗み占有すれば無量の罪と無量の債を得。三宝は世間最大の福田、福を得ること最も大なるも、罪を得ることまた最大なり。地蔵経に云う、寺院の一茎の草を取るも罪あり、まして一茎の草より貴重なる物をや。水・電気・ガス・食物・茶及び各々の用具を含む。
占有もまた盗みの範囲に属す。飲食と物品のみならず、三宝に属する各種の権利と職責を含む。本来三宝の行使すべき権力と職責を、他人がみだりに三宝に代わり主張し、三宝に属する人・財・物を動用し調達し、三宝の頭上を圧するは、この罪更に大なり。
三宝の功徳と名声を占有し奪うも、盗みに属す。この罪は更に大なるべし。これらの戒律を、我らが厳格に守持し犯さざれば、心自然に清浄し、何かを得んとし、便宜を占めんとする心を収め、自然に禅定を得ん。人の心定まらざるは、必ず心に事あり。もしこれらの事を放棄し、再び念わざれば、何ぞ禅定を修め出ださざるを憂えん。
如何なる人や団体の便宜も占めぬ習慣を養成すれば良し。この良き習慣あれば、多くの債務を欠くこと少なく、多くの福德を失うこと少なし。便宜を得る処、正に便宜を失う処なり。世の中に占め得る便宜は元より存在せず、因果存在する故に、一分の便宜を占むる毎に、各々の如来蔵に記録され、因縁熟すれば千倍万倍無量倍にして返還す。還すこと遅き程、孽息高く、還すこと多し。
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