瑜伽師地論　第十八巻

原文：いかにして攀縁せず住着しないか。いわゆる諸愛が永く尽きて離欲し、寂滅涅槃および滅尽定を証することをいう。なぜかというに、攀縁とは諸煩悩の纏縛をいい、住着とは煩悩随眠をいう。それらの処において二種ともに無い故に、攀縁せず住着しないと説くのである。これを涅槃の無攀無住という。また想を攀縁と名づけ、受を住着と名づける。もしある処で二種ともに無いならば、その処を無攀無住と説く。かくの如くに滅想受定の無攀無住を顕示する。今この義においては滅定を指す。

釈：何をもって攀縁せず住着しないというか。すなわち意根の一切の貪愛が永遠に断じ尽くされ、三界世間へのいかなる欲望も離れ、心が寂滅して涅槃の境界に入るか、あるいは滅尽定を証得することをいう。なぜかといえば、攀縁とは意根が諸煩悩に纏縛されることをいい、煩悩に纏縛されない者は心が諸法を攀縁しない。住着とは心に煩悩随眠があることをいい、故に心が法に住する。もし煩悩と煩悩随眠を断じ尽くせば、攀縁せず住着しないと説かれる。これが涅槃の無攀無住の意味である。かくの如くに滅受想定における無攀無住の境界相を顕示すれば、この者が滅尽定を証得したことを説明する。

六識が滅尽し、意根がさらに受と想の二つの心所を滅した状態が滅尽定である。受は法に住する義、法境を受容することを住着と名づけ、想は攀縁の義、了知し執取することを想という。攀縁とは煩悩の纏縛をいい、意根が煩悩を断除すれば攀縁せず、煩悩を断除することを諸愛永尽と称する。諸愛永尽とは離欲をいい、意根が離欲すれば即ち諸愛永尽となり、もはや攀縁せず、意根が離欲して無攀無住となれば無余涅槃に入る。衆生が無余涅槃を証しないのは、意根に攀縁があり、愛欲と住着があり、法を受想し、煩悩に纏縛され、心が寂浄でないことを示す。かくの如くに滅受想定において意根に攀縁も住着も無い状態を顕示するのが滅尽定である。

意根が色塵を攀縁せず住着しなければ眼識意識が生起せず、声塵を攀縁せず住着しなければ耳識意識が生起せず、香塵を攀縁せず住着しなければ鼻識意識が生起せず、味塵を攀縁せず住着しなければ舌識意識が生起せず、触塵を攀縁せず住着しなければ身識意識が生起せず、法塵を攀縁せず独頭意識が生起しない。意根が六塵に対して受も想もなく、受覚と了知性を滅し、六塵を知りたいと欲せず、即ち滅尽定にある。

ここでの思考論理は厳密で隙がない。弥勒菩薩は明確に表明されている：衆生の意根に欲愛があれば、即ち攀縁と住着があり、滅尽定を証得できず涅槃の境界に入って解脱を得られない。もし衆生の意根が離欲離愛すれば、即ち滅尽定を証得し涅槃を証することができ、これを解脱を得たと名づける。

離欲とは三界世間法への一切の貪愛を離れることで三界を離れ、離瞋とは瞋恚の現行煩悩を断除することである。ただ意識の瞋を断ずるだけでなく、さらに意根の瞋を断ずべきである。弥勒菩薩は貪瞋痴を衆生の堅固なる煩悩と説かれる。堅固とは断除しがたく、煩悩が甚だ深いことを意味する。これは単に意識の貪瞋痴を指すのではなく、主に意根の貪瞋痴を指す。意識の貪瞋痴は降伏し断除しやすく、意識は聡明で智慧があり、仏法を学べば転じ得る。しかし意根は聡明でなく、法を理解し難く思惟できない故、転換が困難で、貪瞋痴の煩悩が根深く固着し、抜き難いのである。