問:破戒の前提は既に戒を受けたことにあるはずですが、戒を受けていない者に破戒の説法はあるのでしょうか。
答:破とは破壊の意味です。戒を受けていない者には破戒は語れませんが、悪業の重い者には遮障があります。重戒を犯した場合は殷重に懺悔し、好相を見る必要があって初めて悪業を消滅できます。改めて受戒する必要があります。臨終に遮障がなければ極楽往生できます。もし臨終の一念に悪業の境界が心に現れれば、即時に悪業に随って悪報を受けるでしょう。臨終前に心の念を清浄にし、雑念を生じさせないことができてこそ、三悪道に堕ちずに済むのです。
初果向と初果を得れば、罪を滅することも可能です。ただ業障の遮障によって初果向を得られないことが懸念されます。仏は自ら重戒を犯した弟子や重罪ある弟子に、実相を説き五陰の虚妄を説かれました。弟子たちは罪を滅しただけでなく、実相を証得したのです。
勇施菩薩が悟りを開く前、邪淫戒を犯し殺人教唆の罪がありましたが、仏が大乗の無生の理を説かれると開悟して実相を証得しました。阿闍世王が父を殺害した際、仏が五陰の虚妄不実を説かれると、阿闍世王の極重罪は消滅し無根信を得ました。ただし初果向は証得できませんでした。罪が余りに大きかったからです。もし仏が説法されなければ、無根信さえ得られなかったかもしれません。ただし阿闍世王が母を殺害していたら、罪を滅することも無根信を得ることも困難だったでしょう。
受戒後に破戒する場合、性罪(心性の罪)と戒罪(戒律違反の罪)の二種があります。未受戒の者には性罪による遮障のみ生じます。しかし戒を受けない限り戒律が円満せず、道業は増進できず、証果と明心見性を妨げるのです。
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