真なる断我見と偽りの断我見の区別

仏法の修証においても、真に修証あるものと偽りの修証あるものとが区別され、我見を断つことにも真の断我見と偽りの断我見の区別があり、明心にも真の明心と偽りの明心の区別があります。真偽入り混じった状態は世俗の生活と仏教の修行に満ちており、人々の識別を困難にさせます。凡そ偽りのものは意識の表面に現れるもので、装いとも言え、作為的なものです。凡そ真実のものは意根の深層に相応するもので、意根が認めたもの、心の奥底から滲み出るもの、肺腑より発するもの、作為のないもの、人を信頼させ得る誠実無垢なものであります。

もし断我見が単に意識における断我見のみで、意根が我見を断たないならば、意根は三縛結を断除しておらず、意根の心行は依然として三悪道に相応し、縄束が解かれていないため、三悪道に堕ちない保証はありません。何故なら三悪道への転生は業種と業力によって決定され、意根は業種と業力に相応し、三世を繋ぐ識心であるからです。意根が三縛結を断除しなければ業種は変化せず、命終には業力の牽引により三悪道に堕するのです。中陰身における意根の振る舞いを観察すれば明らかで、意根は中陰身において完全に自らの煩悩習気に相応し、必ず自らの煩悩習気の現行に随って胎生を受けることになります。

意識心は全く為す術がありません。意識は主導権を持たず、また断滅する性質を持つため、断除後の事象については更に主導できません。故に意識のみを修めても全く無益であり、意識による断我見では生死の問題と三悪道不堕の問題を解決できません。一歩譲って意識が三悪道不堕を決定し得ると仮定しても、臨終時には意識が先に滅し、意根と如来蔵のみが残り意識は存在しなくなります。しかし意根と業力が残存し、意根の結縛が断除されていない以上、当然三悪道に堕することを免れません。意識は業種業力に相応せず、三悪道への転生可否を全く決定できず、ましてや意識自身の存続さえ決定できないのです。如何にして三悪道不堕を決定し得ましょうか。