優婆塞五戒相経 第一節 原文:仏は諸比丘に告げたまわく、殺生の罪には人を殺める三つの方法がある。一は自ら行うこと、二は人を教えること、三は使いを遣わすことである。自ら行うとは、自らの身をもって他者の命を奪うこと。人を教えるとは、他人に言葉で教え『この者を捕らえ、縛り上げて殺せ』と言うこと。使いを遣わすとは、他人に『汝は某甲を知っているか。汝、この者を捕らえ縛り上げて殺せ』と言うことである。この使いが言葉に従って彼の命を奪った時、優婆塞は悔い返すことのできない罪を犯す。
釈:仏は諸比丘に告げられた。殺生戒を犯す者には人を殺す三つの方法がある。第一は自ら手を下すこと、第二は他人を教唆して殺させること、第三は人を派遣して(自らに代わって)殺させることである。自ら手を下すとは、優婆塞自らが他人の生命を奪うこと。人を教えて殺させるとは、言葉で別の人に『あの者を捕まえ、縛り上げて殺せ』と命じること。人を派遣して殺させるとは、他人(往々にして配下、従属する者)に『汝は某甲を知っているか? 彼を捕まえて縛り上げ、それから殺せ』と言うことである。この使者が優婆塞の言葉に従って某甲を殺した時、優婆塞は懺悔しても消えない罪業を犯す。
ここで重要なのは、人を教えて殺させることと人を派遣して殺させることの区別と因果関係である。人を教えて殺させることと使いを遣わして殺させることにはどのような違いがあるか。教えるとは教唆・唆すことであり、最終的に直接人を殺し殺生戒を犯すのは教えられた者である。教える者と教えられる者は対等の関係だが、教唆した者の罪はより重い。一方、使いを遣わして殺させるとは、自らの使者を調遣し自らの指示に従って人を殺させることであり、自らに代わって殺させることである。主たる殺害者は優婆塞自身であり、派遣された者は命令に従い任務を遂行する。派遣した者は主犯、派遣された者は従犯であり、これもまた罪を負う。人を教えて殺させようと、使いを遣わして殺させようと、主犯であり元凶は優婆塞自身である。ゆえに優婆塞は懺悔しても消えない殺生戒を犯す。この罪業は自ら殺すよりもさらに重い。なぜなら結果は同じく一人を殺すことでもあるが、他人を教唆し派遣して殺害させることで、さらに他人に悪業を造らせ、その心と行いを汚染し、人と悪縁を結ばせ、悪業の種を蒔くからである。
原文:また人を殺める方法に三通りある。一には内色を用いること、二には非内色を用いること、三には内色と非内色を用いることである。内色とは、優婆塞が手で彼を打つこと。あるいは足やその他の身体の部位を用い、『かくて彼を死なしめん』とこのように念うこと。彼がこれによって死んだならば、これは悔い返すことのできない罪を犯したことになる。もし即時に死なず、後にこれが原因で死んだ場合も、同様に悔い返すことのできない罪を犯す。もし即時に死なず、後にこれが原因で死ななかったならば、これは中ほどの悔い返すことのできる罪である。
釈:さらに人を殺す三つの方法がある。第一は自らの内色、すなわち身体を用いて人を殺すこと。第二は非内色を用いて殺すこと、すなわち身体以外の殺害道具を用いて人を殺すこと。第三は内色と非内色を同時に用いて殺すこと、すなわち手に殺害道具を持って人を殺すことである。内色とは優婆塞の色身(肉体)を指す。色身の一部を用いて打ち殺すこと。例えば手で打つ、あるいは足で蹴る/頭で突く、またはその他の身体の部位で打ち殺すこと。同時に心に『このようにして彼を打ち殺そう』と念う。打たれた者がこれによって死んだならば、優婆塞は悔い返すことのできない殺人の罪業を犯す。もしその者が即死せず、後になって打たれたことが原因で死んだ場合も、優婆塞は悔い返すことのできない殺人の罪業を犯す。もしその者が即死せず、後にもこれが原因で死ななかったならば、優婆塞は中ほどの悔い返すことのできる罪業を犯す。
原文:非内色を用いるとは、もし人が木・瓦・石、刀・槊(ほこ)・弓・箭(や)、白鑞(はくろう)の塊、鉛錫合金の塊などを用いて、遠くからその人に投げつけ、『かくて彼を死なしめん』とこのように念うこと。彼がこれによって死んだならば、悔い返すことのできない罪を犯す。もし即時に死なず、後にこれが原因で死んだ場合も、同様に悔い返すことのできない罪を犯す。もし即時に死なず、後にこれが原因で死ななかったならば、これは中ほどの悔い返すことのできる罪である。
釈:非内色を用いて人を殺す場合とは、もし優婆塞が木片、瓦、石、および刀、長槍、弓矢、白鑞(はくろう)の塊、鉛錫合金の塊などを用い、遠くからその人に向かって投擲し、同時に心にその者が投擲されたことによって死ぬように念じ、もしその者が実際にそれによって死んだならば、優婆塞は悔い返すことのできない殺人の罪業を犯す。もしその者が即死せず、後になって打たれたことが原因で死んだならば、優婆塞もまた悔い返すことのできない殺人の罪業を犯す。もしその者が即死せず、後にもこの打撃が原因で死ななかったならば、優婆塞は中ほどの悔い返すことのできる罪業を犯す。
原文:内色と非内色を用いるとは、もし手で木・瓦・石・刀・槊・弓・箭・白鑞の塊・鉛錫合金の塊・木片などを捉え、これを持って彼を打つ。『かくて彼を死なしめん』とこのように念うこと。彼がこれによって死んだならば、これは悔い返すことのできない罪である。もし即時に死なず、後にこれが原因で死んだ場合も、同様に悔い返すことのできない罪を犯す。もし即時に死なず、後にこれが原因で死ななかったならば、これは中ほどの悔い返すことのできる罪である。
釈:内色と非内色を和合させて打ち殺す場合とは、もし優婆塞が手に木片、瓦、石、刀、長槍や弓矢、白鑞の塊および鉛と錫の合金塊を持ち、あるいは木片を用いて打ち殺し、同時に心にその者がこれによって死ぬように念じ、その者が実際に打たれて死んだならば、優婆塞の殺人の罪は懺悔しても消えない。もしその者が即死せず、後になって打たれたことが原因で死んだならば、優婆塞もまた悔い返すことのできない罪を犯す。もしその者が即死せず、後にもこれが原因で死ななかったならば、優婆塞は中ほどの悔い返すことのできる罪を犯す。
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