優婆塞五戒相経 第一節 原文:また内色をもってせず、非内色をもってせず、また内色と非内色とを合わせて人を殺すことなし。人を殺さんがために、もろもろの毒薬を合わせ、もし眼・耳・鼻・身の上にある瘡の中に置き、あるいはもろもろの飲食の中に置き、もし敷物の中、車の中に置き、かくのごとく念う。かの者をしてこれによって死なしめんと。かの者これによって死せば、犯すところ不可悔の罪なり。もし即時に死せず、後にこれによって死すれば、また不可悔の罪を犯すなり。もし即時に死せず、後にこれによって死せざれば、これ中罪可悔なり。
釈:また内色を用いず、非内色も用いず、また内色と非内色を合わせて人を殺す場合もある。人を殺さんがためにもろもろの毒薬を調合し、あるいはその者の眼・耳・鼻・身および身上の患部に置き、あるいはその者の飲食の中に置き、あるいは布団の中、車輿の中に置き、同時に心にこう念う。彼をこうして毒殺させようと。もしその者がこれによって死んだならば、優婆塞は不可悔の殺人罪を犯す。その者がもし即時に死なず、後になってこれによって死んだならば、同様に不可悔の罪を犯す。その者がもし即時に死なず、後にもこれによって死ななかったならば、優婆塞は中ぐらいの可悔罪を犯す。
原文:また無煙の火坑を作って殺す者あり。核殺、弶殺(わなによる殺害)、落とし穴を作って殺す。触殺(殺虫剤による殺害)、ピータラ殺(呪術による殺害)、堕胎殺、腹を按じて殺す。火中・水中に推し落とす。坑中に推し落として殺す。もし遣わして行かしめ、道中にて死なしむ。はたまた胎中にて初めて二根(身根と命根)を受くるとき、その中において方便を起こして殺す。
釈:なお他の殺人の方法がある。例えば煙の出ない火坑を設置して殺すこと、果実の核を用いて殺すこと、小動物を捕らえる道具で殺すこと、落とし穴を作って殺すこと、殺虫剤で殺すこと、呪文で殺すこと、堕胎の方法で殺すこと、妊婦の腹を押さえて殺すこと、火中や水中に突き落として殺すこと、穴の中に突き落として殺すこと、あるいはその者をどこかに派遣し途中で殺させること、はたまた母胎の中で身根と命根が現れ始めた時に、さまざまな方便の方法で殺すことである。身根とは受精卵を指し、命根とは意根(意識の根源)を指す。
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