衆生はなぜ豚肉を食べることができないのでしょうか？

ある学人が問うた。「如何にして階級を落とさずに済むのでしょうか？」黄檗禅師は答えられた。「一日中食事をしていても一粒の米も噛まず、一日中歩いていても一片の地も踏まず。このような時、人我の相なく、終日一切の事から離れず、諸境に惑わされぬ者を自在人と名付ける。更に時々刻々一切の相を見ず、前後三際を認めざるべし。前際は去ることなく、今際は住まず、後際は来たらず。安らかに端坐し、任運に拘られず、これを解脱と名付く。努力せよ努力せよ！この門中では千万人いても三五人しか悟れぬ。もしこれを事とせざれば、殃いを受ける日必ずある。故に着力せよと云う。今生にて了却すべし、誰か劫を累ねて余殃を受くべきや」

「階級」とは修業の階梯を指す。「階級を落とさず」とは直接法の根本・究竟処に至る意。如何にして直接空性を証得するか。黄檗禅師は答えられた：もし成し得るならば、終日食事しても一粒の米も食わぬが如く、心空にして我を着せず。終日歩いても一片の地も踏まぬが如く、心空にして我を着せず。自らが食事し歩く相に落ちざる時、心中に人相我相なく、終日一切の事から離れずして諸境に迷わされず、諸相に縛られぬ者こそ自在人なり。更に時々刻々一切の相を見ず、一切の法に前際・現際・後際あると認めざるべし。前際は去ることなく、現際は刻々と留まらず、後際は来たらず。一切時に安らかに端坐し、任運にして法に縛られざる、これを解脱と名付く。

これは禅宗般若の証悟後の境地、五蘊空の境地なり。何故空か。如来蔵より生ずるが故に空と云う。この境地は小乗の空より一歩進み、凡夫の有より遥かに勝るが、唯識の空には及ばず。小乗と般若の層では人空、唯識の層では法空。法空は人空の上に更に微細に入り、範疇広く深し。

例えば食事の件、般若の層では我の食事なく、食事する我なく、我は食事の我相を着せず。唯識では飯の相さえなし。衆生の興味を引く豚肉食について云うなら、五蘊は外相分の実質たる豚肉に触れず、後頭部の内相分の豚肉にのみ触る。然るに豚肉を食した後、内相分の豚肉なきのみならず、外相分の豚肉もまた無し。何故か。

実質の豚肉に触れざるは、即ち豚肉を食さずと等し。然らば口に入り腹に下るものは何か。口が食す飯は後頭部の飯、口と歯舌も後頭部のもの。而して食事する汝も空なり。飯を食したと言えようか。飯を豚肉に替えれば、豚肉を食したと言えようか。汝が食したのは内相分の豚肉、外相分の豚肉は消え失せたり。如何にしてか。秘密、大いなる秘密。一生をかけて参究すべく、幾劫にも値う。

この法は深し。小乗の我見断ち、大乗の明心あれども、参究容易ならず。内外相分の生滅は皆如来蔵の用い、六識の功能も如来蔵の用いの結果なり。法法皆如来蔵、悟らざれば到底参究叶わず。

無始劫より、色声香味触法の六塵境界を、衆生は一度も触れたことなし。然るに刻々と六塵境界を己がものとし、心口に念々と云う：これ我がもの、あれ我がもの、我が身、我が家族、我が言葉、我が聞く音、我が食す肉、飲む水、寝る床、我が権力地位名声等々。この香りあの味、汝は一つも触れ得ず。何が汝のものか。生死を超えた世々代々の追求追従、元来は空と争い、空と奪い合い、空と遊ぶ戯れ。而して己もまた空なり。空と空の争い、戯れの主役さえなし。所謂争いもまた空。衆人よ、世俗法の戯れに時を費やすより、真にこれらの真理を探求すべし。生死を超えた世々代々の空しき戯れを免れんがため。真理こそまことの魅力ならずや。

ある者は棍棒で卓を叩き、強く思い込む：見よ、我は卓を叩き、威張り、鬱憤を晴らせりと。実のところ、棍棒は後頭部の棍棒、手は後頭部の手、卓は後頭部の卓、行為は後頭部の行為。この行為を見るは後頭部に見、音を聞くは後頭部に聞き、鬱憤晴らせりと思うは後頭部に思う。全ての五蘊活動は後頭部にて造作す。

後頭部の大きさ、如何にしてかくの如き多くの法を容るる。これらに止まらず、億万の法、無量数の法、皆後頭部に起こる。空の法、実質なき法こそ後頭部に落ちる。実質ある相の法は後頭部に落ちず。世間一切の法に実質なく、皆空、皆影像、皆影なり。豚肉もまた然り、豚肉を食するも然り、我が豚肉を食するもまた然り。その人その事無し。何を執着し何を求むるか。愚者たちよ。

この理を証得せんには、まず我見を断ち、次に心を明かすべし。我見を断ち五蘊空を証得するは甚だ重要。内外相分の問題は悟りて後参究すべし。禅定と智慧共に深くして初めて道筋見えん。如来蔵の角度より参究してこそ糸口得べし。一切法の実質は如来蔵の功能作用なり。

如来蔵と五蘊、我は世間の如何なる法にも触れず所有せず。然るに世間一切法の外相分と内相分はかくの如く絶えず生滅し、造作され続く。この現象は確かに人々に受け入れ難し。空の法、世間人は信じ難く、有に執着する習性なり。然るに仏法は大乗小乗を問わず、全て空を指す。空の果てに一絲まとわず、究竟空徹底して即ち仏となる。