意根の二種の煩悩心所有法

末那識に伴う煩悩心所法は二種に分けられます。一つは恒常的に末那識とともに現行し、刹那も絶えることのない煩悩心所法で、『瑜伽師地論』に説かれる我見・我慢・我愛・無明（我痴）がこれに当たります。もう一つは恒常的に末那識とともに現行しない煩悩心所法で、これには前記四煩悩以外の心所法、例えば瞋恚怒などの大中小随煩悁が含まれます。これらの煩悩が恒常的に現行するならば、衆生の自他身心は深刻な損害を受け、生活は混乱し、寿命は長続きしません。ただ我見・我愛・我執・我慢の煩悩こそが凡夫衆生に恒常的に現行する煩悩なのです。

あらゆる人々は深遠な法に出遇っても、現前に観行することができず、わずかに表面的な意味を理解するのみであるため、経典の文言を暗誦するほかありません。十二因縁法が示すように、衆生が六道において生死輪廻を繰り返すのは、末那識の無明によるものです。末那識に無明がなければ十二因縁は尽き、衆生の煩悩は尽き、生死より解脱します。無明が行を縁じ、行が識を縁じます。この七文字を充分に理解すれば、末那識に瞋恚が存在するか否かが明らかになります。末那識の無明に瞋恚が含まれなければ、六識に瞋業を造作させることもなく、生死の業は半減します。意識に瞋恚があっても問題ありません。なぜなら意識は瞋業を造作する決定力を持たず、従って瞋業の種子も生じず、瞋恚による生死の業も存在しないからです。

さらに、意識の瞋恚はどこから来るのでしょうか。どのようにして現れるのでしょうか。多くの人々は末那識に瞋恚が存在するかを現前に観察できず、末那識と意識の論理的弁証関係を整理できず、六識の身口意行の由来も知らず、ただ経典を暗誦するのみで、自分たちの浅薄な理解が正しいと思い込んでいます。『楞厳経』に説かれるように、衆生の生命の最初期には末那識と阿頼耶識のみが存在し、末那識が念を起こして初めて天地万物と五陰六識が生じました。末那識に瞋恚がなければ、意識の瞋恚はどこから来るのでしょうか。瞋業はどのように現れるのでしょうか。衆生同士が争い戦うのは何故でしょうか。どのようにして生じるのでしょうか。

意識の煩悩は容易に調伏・断除できます。理論を理解し、明確に把握すれば、効果的に煩悩を制御できます。しかし末那識が煩悩を断たない限り、根本問題に遭遇した際、意識が油断すれば即座に煩悩が現れ、人は本性を現します。例えば夢中や酔った時、意識が弱まると理性を失い、末那識の煩悩が全て表出します。酩酊後の瞋心と瞋行、これも意識によるものでしょうか。なぜ酒後に悪業を造りやすいのでしょうか。なぜ酒後には本性が現れるのでしょうか。なぜ酒後に人柄が分かるのでしょうか。

煩悩の調伏とは意識の煩悩を断つことですが、これはあくまで一時的なもので持続しません。末那識の煩悩が断たれなければ、意識で断った煩悩も因縁が具足すれば再び生起し、根本的に制御できません。従って瞋恚の煩悩は第三果において初めて断尽され、これは末那識が第三果で初めて瞋恚煩悩を断尽することを示します。意識の瞋恚煩悩は凡夫が理を明らかにする段階で断除できますが、究竟的ではなく、特殊な因縁に遇えば再び現れます。例えば性格温和で怒り知らずの者が、通常は如何なる状況でも瞋恚を起こさない場合、これは意識に瞋恚がない状態です。しかし一旦特別な状況に遭遇し、その者の底線に触れれば、このような者でも殺人を犯す可能性があり、これは末那識の瞋恚が現行したことになります。