現量・比量・非量了別を運用する心所

三種の了別において、五十一個の心所法は必ずしも全てを用いる必要はなく、具体的な状況に応じて分析すべきである。状況が異なれば用いる心所法も異なり、人によって様々な理由で使用する心所法に差異が生じる。同一人物であっても、時と場面、身体状態や心理状態、知識レベルや智慧の水準が異なれば、運用する心所法も同一ではない。五遍行心所法は常に用いられるが、五別境心所法は必ずしも全てが用いられず、善十一心所法も常に現れるとは限らない。根本煩悩や大・中・小随煩悩心所法の出現も状況次第である。

現量了別には十分なデータが必要であり、それは深い智慧を要する。勝解心所法が非常に強く、定心所法が現前し、念心所法が具足され、心心念念として間断ない状態を実現しなければならない。比量了別は相対的に智慧が浅く、必ず比較を経る必要がある。比較がなければ参照基準が得られず、相対する縁がなければ着手の余地もない。一方、現量了別は比較せず直接に知る、あるいは即座に知るもので、根が利いている。非量了別は全く証拠が見つからず、十分なデータも対照対象もない状況下で、想像・推測・推理等手段を用いざるを得ない。用いる方法が多ければ多いほど智慧が限られており、勝解力が弱く、定力も念力も不足していることを示す。従って直接的な判断が下せず、結論を導くことができない。

比量はあたかも一人で事を成し遂げる力が足りず、人を頼らざるを得ない状況に似る。非量は協力者さえ見つからず、独りで手探りするようなもので、偶然正解に至ることもあるが、たとえ正しくても智慧不足であり現量には属さない。他人の着衣を見ず、対照もないまま推測せざるを得ぬ様に、たとえ推測が当たっても直接見たわけではない。

智慧不足の者が、現量をもって道を証見するための段階的指導法を知らずに人を導こうとする時、消去法を採ることがある。例えば五本の道が城外の五地域に通じ、その内一本のみ北京に至るとする。正しい選択方法を教えず、最初の道を指し示す。相手が躊躇して確信を持てぬ様子を見て眼神で否定し、次に第二の道を選ぶ。相手が再び表情から否定を察し、第二の道を排除する。こうして四本を否定し、最後の一本を残す。相手が「この道が北京に通じる」と言えば、「私が教えたのではなく貴方自身が言ったのだ」と告げ、道を証見したことを祝う。果たしてこれをもって証見と言えるか。このような証見から生じる智慧とは何か。人を惑わし弟子を誤る者はまさにこの類であり、偽りなき詐欺師である。騙される者も喜んで受け入れ、愚痴の徒が揃い踏みとなる。