如来の三十二相もまた非相なり

金剛経原文：須菩提よ、どう思うか。三十二相をもって如来を見ることを得べきか。いな、世尊よ。三十二相をもって如来を見ることを得べからず。なんとなれば、如来の説きたまうところの三十二相は、すなわちこれ相にあらざればなり。これを三十二相と名づく。

釈：仏は説きたまう、須菩提よ、この問題をどう考えるか。三十二相によって如来を見ることができるか。須菩提は答えて申す、できません、世尊よ。三十二相によって如来を見ることはできません。なぜこう言うのか。如来の意旨によれば、如来の説きたまう三十二相もまた真実の相ではなく、仮に三十二相と名づけられたものだからです。

三十二相が真実でないならば、それは如来でもありません。それゆえ、われわれは三十二相を如来と見做すべきではなく、また三十二相に如来を求めるべきでもありません。真の如来は三十二相の背後に隠れており、その真の姿を見るためには大いなる智慧と福徳を具えねばなりません。三十二相が如来でないように、五蘊もまた我ではなく、人でなく、衆生でなく、寿者でもありません。われわれは五蘊のいずれか、あるいはすべてを我として執着すべきではなく、五蘊の相を破り、それによって我相・人相・衆生相・寿者相を破らねばなりません。

如来には三十二相八十種好がありますが、三十二相も実在の相ではなく、八十種好も真実の相ではありません。これらは無から有へ、有もまた空へと帰する相であって、如来の無垢識が三大阿僧祇劫にわたる修行によって培った善業の種子が顕現した相です。その性質は空であり、相もまた空です。三十二相は仮の相に過ぎません。転輪聖王もまた三十二相を具え、仏の従弟である難陀比丘も三十一相を具え、魔王も三十二相を顕現させることができます。もし相によって人を認めれば、誤認しやすく、相が滅すれば人も滅するように見えますが、実際には如来は滅しません。ゆえに真の相と仮の相を見極め、相を破り執着を断つことによってこそ智慧が増長し、相に縛られなくなるのです。