意根の五つの名前の意味（一）

『大乗起信論』原文：生滅の因縁とは、諸衆生が心意識に依って転ずるをいう。この義いかん。阿頼耶識に依って無明不覚起こり、能見・能現し、能く境界を取り、分別相続する。これを意と名づく。

釈：一切の法の生滅は、全て因縁によって現起する。これらの因縁には阿頼耶識・意根・意識という三つの能変識が含まれ、中でも意根は一切の法が現起する最も重要な因縁である。衆生は皆意根に依って流転する。阿頼耶識こそが一切の生滅法を生じる直接の因ではあるが、それは意根によって促されるものである。意根という因縁がなければ、阿頼耶識は何らの法をも生じない。意根は阿頼耶識に依り、自心の無明に随って阿頼耶識の生ずる一切の境界法を見、さらに心中に阿頼耶識の生ずる一切の境界法を現出し、阿頼耶識の生ずる一切の境界法を執取し、絶え間なく相続して分別し、毫も自らのこのような無明を覚らない。このような心体を意根と名づける。

原文：この意にはさらに五種の異名あり。一つには業識と名づく。無明の力により、不覚のまま心動くをいう。

釈：この意根には五つの異なる名称がある。第一を業識という。意根は業を造る主体であり、無明があるために自らの無明を覚らず、無明の力が意根の心を動かして意を起こさせる。意が起こった後、続いて触・受・想・思が現れ、意根の心が決定すると、六識の身口意の業行が造作され、業種を残して後世の報いを受け、生死が相続して絶えない。故に意根は業識と言い、無明業力に相応し、業種に相応し、生死に相応する。もとより修行によっては空に相応し、清浄に相応し、寂静に相応し、解脱に相応する。故に修行とは意根を修め、我見を断じ、明心見性し、識を転じて智と成し、唯識種智を具え、最終的に仏となることである。

原文：二に転識と名づく。動く心に依り、能く境相を見るをいう。

釈：意根の第二の名称を転識という。転とは流転の意、また運転の意である。意根は無明の力によって、法を阿頼耶識から流転させ運転させる。意根の心が動くと、阿頼耶識はそれに随って境界を生じ、意根は境界相を見る。さらに心が動くと六識が生じて業行を造作し、五蘊の作用が現行し、後世の生死が絶えない。境界と五蘊は皆意根の心の動きに随って現れ、生死もまた意根の心の動きに随って現れる。故に意根は一切の法を転動させる機関であり、即ち転識である。

原文：三に現識と名づく。一切の諸境界相を現ずるをいう。あたかも明鏡が衆色の像を現ずるがごとし。現識もまたしかり。五境のごとく、対至すれば即ち現じ、前後なく、功力によらず。

釈：意根の第三の名称を現識という。この「現」は顕現の意である。意根が一切の法を見た後、一切の法を顕現する。一切の法は意根の心中に影像を現じ出す。意根は阿頼耶識に依り、阿頼耶識が変現する境界に応じて、意根はその境界を了別し、心中にその境界を顕現する。あたかも明鏡が一切の境界相を現ずるが如し。例えば五塵境界像は、意根が触れるやいなや直ちに五塵境界像を現じ出す。阿頼耶識が境界を生じる時、意根はほとんど同時に前後なく心中に境界を現じ出し、故意の加工も必要としない。