如来蔵を証得することと成功裡に転依することの差異

如来蔵を証得することは前提であり、転依の成功は結果である。前提と結果の間にはほぼ一阿僧祇劫に及ぶ長い時間を要する。証悟を得た後は、如来蔵が五陰身の中で作動する様を現前に観察することができ、別相智を発起すればするほど智慧は深微を極め、如来蔵に対する観察も次第に精緻を増していく。この観察を通じて五陰の虚妄性が次第に明らかとなり、五陰身への執着は薄れていく。同時に、如来蔵の作動における清浄無為の性と、無我無煩悩の有為の性を観じ得るようになる。

如来蔵の清浄無為の性も煩悩なき有為の性も、いずれも極めて純粋無私の優れた性質であるため、第六・七識は知らず識らず感化を受け、心性は自然に変化を遂げ、次第に如来蔵の心性へと近づいていく。これが転依如来蔵と称される所以である。ただし如来蔵に依り心性を転換しているとはいえ、未だ量変から質変には至っておらず、量的蓄積が本質的な心性の転換を成し得るには至らないため、如来蔵を依止する段階では未だ成功とは言えない。

転依成功のしるしは何か。主として心性の転換、煩悩の消滅、心の清浄、戒定慧の具足、心量の広大、誓願の宏大深遠、無私無畏、無我無為に現れる。戒は菩薩戒の円満な行持に体現され、有相戒を意識の抑制なく自然に守持し、全ての行為が戒法に適う。心性が転換すれば身口意の行いも自然に清浄となり、やがて無相戒の行持へと至る。心は万物の主であり、心が清浄ならば全てが清浄となる。心が清浄で煩悩なき者こそ無相戒を行持する資格を有し、未だ煩悩を断じない者は無相戒を受持できない。

禅定においては初禅以上の禅定を具足せねばならない。初禅定を具足して初めて心の清浄と煩悩の消滅が保たれ、深甚な智慧が生起する。初禅定なき者は煩悩必ず現行し、有相戒すら守持できず、まして無相戒を受持する資格も能力もない。智慧の面では、第六・七識が転識得智し、深甚な唯識種智を具え、一切法が唯識以外にないことを了知する。

心性の転依に成功した菩薩は、如来蔵の如く有為と無為を兼ね備え、有為の時は無私、無為の時は無我となり、これらが矛盾なく融合する。深甚な禅定と智慧により心は空無相となり、無相ゆえに無為、世俗法を貪らず、心は俗世を背き作為なき境地に至る。また衆生を悲憫する心を発し、私利を求めず弘法利生に励み、仏恩に報い仏種を継承する。十大無尽の誓願を発し、如来の家業を継承し、際限なき衆生を度脱して未来際にわたって永く絶えることないのである。