円覚経原文：善男子よ。一切の障碍は即ち究竟覚なり。念を得るも念を失うも、解脱に非ざるはなし。法を成ずるも法を破るも、皆涅槃と名づく。智慧と愚痴は、通じて般若となる。菩薩と外道の成じる所の法は、同じく菩提なり。無明と真如は、境界に異なることなし。諸の戒定慧及び淫怒痴は、倶に梵行なり。

釈：善男子よ、一切の業力と障碍、一切の煩悩は、即ち最も究竟なる覚性なり。究竟覚とは如来蔵の自性覚を指す。何故かと言えば、一切の煩悩障碍は皆如来蔵より出生し執持され、如来蔵の円満成就する所にして、悉く如来蔵性を具え、如来蔵無くしてはこれら一切の障碍存在せぬ故なり。念を得る失うの意は得んと願い失うを恐れる患得患失なり。されど此の二者に解脱に非ざるはなし。何となれば皆如来蔵より出生し顕現し、如来蔵の円満成就する所にして、如来蔵性を具え、如来蔵無くしては念を得失する此等の法相存在せず。故に実在せざる所の念得失は解脱なり。

諸法を成じ諸法を破るも、皆清浄なる涅槃なり。此の両事は如来蔵より出生し摂持され、如来蔵の円満成就する所なれば、此の両事は涅槃の清浄行と清浄性にして、悉く如来蔵性なり。智慧と愚痴は皆般若なり。二者共に如来蔵より出生し顕現し、如来蔵の円満成就する所にして、悉く如来蔵性なり。

菩薩の修行の成じる所の善法清浄法と、外道の修成する所の邪法不善法とは、同じく菩提なり。二者共に如来蔵より出生し摂持され、如来蔵の円満成就する所にして、悉く如来蔵性なればなり。無明と真如の二者の境界に差異なし。皆如来蔵より顕現する所なれば、無明即ち真如なり。無明の境界に処するも、無明の全体は却って真如性なり。一切の戒定慧清浄行と貪瞋痴行とは、同じく梵行なり。皆清浄なる如来蔵より出生し摂持され、如来蔵の円満成就する所にして、悉く如来蔵の清浄涅槃性なればなり。