漸修と頓悟とは何か

頓悟に至る前には漸修の過程が必要であり、この漸修は悟り後の漸修とは性質が全く異なります。頓悟前の漸修とは三十七道品と菩薩の六波羅蜜を修め、戒定慧を実践し、暖・頂・忍・世第一という四善根を具足して初めて大小乗の仏法を頓悟するものです。この道理を譬喩を用いて説明すれば、より明らかになります。例えば千年も経た老木を切り倒す場合、幹が非常に太いため、工具で少しずつ切り刻んでいく過程が漸修に相当し、最後に老木が一気に倒れる瞬間が頓悟に相当します。したがって漸修なくして頓悟はありえません。

木を倒した後の加工工程、すなわち樹皮を剥いだり板材に裁断したり、研磨・艶出し・蝋引き・着色などは悟り後の漸修に似ており、最終的に板材を組み合わせて鑑賞に値する家具や工芸品とするのは究極の頓悟成仏に相当します。老木を切り倒す作業は非常に労力と忍耐を要し、根気・持久力・体力が必要で、工具も鋭利でなければならず、技術も卓越していなければなりません。これは見道に必要な資糧に相当し、資糧が不足すれば見道は不可能です。修行する者のうち、途中で退転したり脱落したり足踏みする者がおり、なかには完全に方向転換する者もいます。修行の道は進むほど同行者が減り、初心を発つ者は万いても堅持する者は稀で、成道する者は一人いるかどうかです。故に聖人は鳳凰の羽や麒麟の角のように極めて稀で貴重であり、出遇えたなら大切にすべきです。

悟り前の漸修と悟り後の漸修を混同し、悟り前に漸修はなく修行は悟り後とする見解があります。しかし漸修を伴わない頓悟は解悟ですらなく、全くの妄想推測に過ぎず、些かの功徳も受用がありません。ただし極めて大きな善根を持つ諸地の菩薩は前世の深厚な基礎により直接頓悟できます。悟り前の漸修こそが凡夫の心性を聖なる心へと転換する過程であり、生まれ変わる脱胎換骨の過程、鯉が竜門を跳ぶ前の変容過程です。この過程なくしてどうして変容できましょうか。故に真の悟りを得たか否かは、その心性と骨格を観察すべきであり、表面的な華やかさや弁舌の巧みさに惑わされてはなりません。本質が最も重要です。

漸修とは自己の身心を次第に聖賢の身心に近づけ相似させることであり、聖賢の基準に達して初めて頓悟見道できます。これが心を修める過程であり、心が変わらなければ聖賢の心行ではなく、聖賢には成れません。故に漸修は極めて重要で、修所得慧を生起させる鍵となる段階です。これ以前は聞所得慧と思所得慧のみで非常に浅く、生死の業障に抗えません。修所得慧が具足して初めて証道所得慧が生じ、ここから三悪道の業を免れ、煩悩を断ち、輪廻の苦から解脱できるのです。