諸仏菩薩はなぜ悪の薫習を受けないのでしょうか

もし衆生が世の中におり、悪縁に遇うとまだ染まることがあり、それによって煩悩が現れるならば、衆生の意根は煩悩と相応しており、まだ煩悩を断じていないので、縁に遇えば染まり、縁に遇えば悪業を現すのです。諸仏は三大阿僧祇劫の修行を経て、とっくに貪・瞋・癡・慢・疑・悪見などの一切の煩悩染汚、および一切の煩悩習気を断じ尽くし、もはや余習なく、五濁悪世に来たりて、諸々の煩悩ある衆生と接触しても、決して衆生の煩悩による微塵の染めや汚れを受けることなく、心は永遠に清浄無垢であります。仏は初地においてすでに煩悩を断除し、心に染汚がなくなったのですが、その時はまだ煩悩習気が断じ尽くされていなかったのです。

諸仏が初地以前から断除し始めた煩悩は、第六識・第七識ともに断除する煩悩であり、第七識が煩悩を断じて初めて識を転じて智と成し、平等性智を具え、一切の法を平等無二と観じ、自他の別がないので、私心なく人や物事に平等に対します。第七識である意根が煩悩を断じたため、後世どこに生まれ変わろうとも、意根には煩悩がなく、染まることはありません。しかし煩悩習気が断じられていない時は、習気が時折現行することがあり、これは避け難く、意識も環境に染まることがあります。意識が染まって多少の煩悩を現しても、速やかに消滅し、持続・堅固になることなく、意根に影響を及ぼすこともありません。

意根が染まらず、そもそも煩悩がなくなっているため、意識の煩悩は断じ易く、そうでなければ意識は意根に左右され、煩悩は断じ難く、仮に断じても再び生起します。八地以上の菩薩は、意識がもはや染まることがなく、煩悩習気を現行せず、諸仏の意識はさらに微塵の染めや汚れも受けず、煩悩と習気が現れず、色を見て貪らず、財を見て愛さず、権勢や地位を求めず、瞋らず怒らず、煩わず焦らず、心は柔軟で調和し、寂静極まりません。一方、凡夫衆生の第六・第七識は一切の煩悩を具足し、縁に遇えば染まり、常に環境に順じ、環境に対する抵抗力が乏しく、色を見れば愛し、財を見れば貪り、権勢を好み、名利を求め、逆縁が現前すれば瞋怒が常に心に随い、私心我執が極めて重いのです。

ここから分かるように、凡夫衆生の意根は貪・瞋・癡・慢・疑・悪見の一切の煩悩を具足し、意識は意根に従い、煩悩も常に現前し、染縁に遇えば意識は容易に染まります。意根は三世をつなぎ、また一切の煩悩を具足しているため、生死輪廻が絶えず、中有身および後世に生まれるやいなや一切の煩悩を具足し、前世と異なることなく、生生世世煩悩が止みません。ただし我見・我執・我慢・我痴の煩悩は常に意根に伴って絶え間なく運行し、一時も休むことがないのに対し、他の煩悩は常に意根に伴って運行するのではなく、縁に遇って初めて現行し、悪業を造り、業種を留め、後世の生死輪廻を継続させるのです。