瑜伽師地論 第三十四巻（六十二）

原文：かくの如く精勤してヨーガを修める行者は、心の相続が次々と転変し差異あるを観ず。新たに生じ、ある時は増し、ある時は減じ、暫時にして有り、刹那に現前し、前後変易するは無常の性なり。心の相続が取蘊に摂せらるるを観ずるは苦の性なり。心の相続が第二の法を離るるを観ずるは空性なり。心の相続が衆縁より生じ、自在を得ざるを観ずるは無我の性なり。かくの如きを苦諦に悟入するとなす。

釈：このように精勤してヨーガを修める行者は、自心の相続が絶え間なく流転変化することを観察する。心に新たに一つの法が生じ、次の瞬間にはまた別の法が生じ、不断に変化し、その心意は時に増し時に減じ、全ては暫時的に存在し、刹那に現前して過ぎれば変わる。このように前後変易する心は無常性である。さらに自心の相続が絶え間なく続き、取着するものあるを観れば、それは取蘊に摂受されている苦性である。さらに自心の相続が絶え間ないも、心は如何なる法にも属さず、その心が空であることを観ずれば空性である。さらに自心の相続が衆多の因縁和合より生じ、自在を得ざるを観ずれば無我性である。かくして苦諦に悟入するという。無常・苦・空・無我、これを苦諦と名づく。