意根は意識の俱有依です

俱有依とは、俱（とも）に有する依（え）という意味であり、二つあるいは複数の法が互いに依存し合って存在することを指します。「俱有」とは生来より共にあることで、出生時より相伴っている状態を表します。「依」は依存を意味し、此れ有れば彼れ有り、この法が彼の法に依存して初めて生じ存在し得ることを示します。

ある人が「五根が意識の俱有依である」と説いていますが、これは五根が意識発生の必要条件であり、五根無くして意識無く、意識が存在するには必ず五根が必要であるという主張です。しかし、実際はそうでしょうか。衆生の形態を見るに、多くの衆生は五根を持たないにも拘わらず、依然として意識を有しています。例えば無色界の天人、無身の菩薩や大阿羅漢たちなど、彼らは意識を保持しながら五根を具えていません。全ての衆生の独頭意識は五根に依存せずに生起し存在し、深甚なる禅定において意識が体外に出た場合でも、依然として塵境を了別することが可能で、五根を必要としません。従って五根は意識の俱有依ではなく、意識の俱有依は第八識・意根・種子であると言えます。

意識の発生に必要な縁は極めて少ないため、生起し易く滅し易い特性を持ちます。五識は二禅以上の定中では完全に滅尽しますが、意識は無想定と滅尽定においてのみ滅します。故に意識の俱有依は五根でも五識でもなく、意根であると説かれます。意根は意識が生起し得る根本であり、意識は意根に依って初めて生起し活動します。意根が作意し択択した後に意識が生起するため、意根無くしては意識は発生し得ません。この故に意識は常に意根と相伴い、意根に奉仕し、意根を調制し薫染します。しかし意根は必ずしも意識と相伴うものではなく、意識と俱に存在しない場合も多々あります。睡眠状態などがその典型例です。