原文:かくの如き比量作意の力の故に、滅壊する行より、彼の諸行の刹那生滅を、滅壊無常と観じて決定を得る。かくの如き事に於て決定を得たる後、復た他世に現見せられざる諸行の生起を正しく比量すべし。いかに比量するや。諸有情に現に種々の差別あるを得るを謂う。或いは好なる形色、或いは悪しき形色、或いは上族の姓、或いは下族の姓、或いは富める族姓、或いは貧しき族姓、或いは大なる宗葉、或いは小なる宗葉、或いは長き寿命、或いは短き寿命、言或いは威厳あり、或いは威厳なく、或いは性利根、或いは性鈍根。かくの如き一切の有情の差別は、定んで作業によりて其の差別有りて方よって成立す。作業無きに非ず。かくの如き有情の色類の差別は、定んで先世の善不善の業により、造作増長せる種々の品類なり。
釈:比量作意の力あるが故に、諸々の滅壊行の上より、諸行の刹那生滅を観察し、滅壊無常を了知して結論を得る:諸行は変異無常なり。これらの事柄に決断を下した後、前世と後世の諸行に現見されざる諸行の生起に対し、正しく比量すべきなり。如何に比量すべきか。諸有情の現前には種々の差別が観察され得る。或いは端正なる相貌、或いは醜悪なる相貌、或いは高貴なる家柄、或いは賤しき家柄、或いは大族より出ず、或いは小族より出ず、或いは長寿なる者、或いは短命なる者、或いは威厳ある言辞、或いは威厳なき言辞、或いは利なる根性、或いは鈍なる根性。
かくの如き一切の有情の差別は、必ず其の為したる業行の差別によって成立すべきなり。所作の業行無きに非ず。かくの如き有情の色相種別の差別は、必ず先世に造作したる善業・不善業の故に、互いの種々なる品類差別を増長せしむるなり。
正比量とは已に心得の決定したる現見に基づき対比思量するを謂う。若し現見に基づかざれば、其の対比思量は正比量に非ず。正比量ならざるは智慧に摂せられず、正比量は智慧を獲るなり。
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