瑜伽師地論第三十四巻（三十七）

原文：これは変異が生起する因縁であり、諸行が滅壊する因縁ではない。何故かと言えば、それらの諸行は世間に現に見られる滅壊因縁と共に滅び去った後、再び相似たものが生起することは得られないが、全てが全く生起しないわけではないからである。或る諸行は滅び去った後、一切の生起が全く得られない場合がある。例えば水を煎じる如く、最後には一切が悉く消え尽きる。災火が器世間を焼尽した後には灰燼すら存在せず、影さえも得られない。それも因縁によって後々転変し漸減して尽きるが故に、最後には一切が全く無となる。火がこのような事を為すによるのではない。故に変異は前に説かれた八種の因縁によって変生を起こし、自然に滅壊するのである。

釈：これは諸行が変異する現象が生起する因縁であり、諸行が滅壊する因縁ではない。何故かと言うならば、諸行と世間に現見される滅壊因縁が共に滅び去った後、再び相似た法が生起しないという現象によって明らかであるが、全ての法が生起しないわけではない。或る諸行が滅び去った後、一切の法が全く生起し得なくなる場合がある。例えば水を煎じる如く、煎じるほどに減少し、遂には全ての水が消失する。

また三災中の火災が器世間を焼尽した後には、灰燼すら存在せず、影さえ見られない。これも因縁が絶えず転変することによって諸行が次第に減少し、尽滅に至り、最後には一切の法が存在しなくなるのである。器世間が尽滅するのは火災によるものではない。故に諸行の変異は前述の八種の因縁によって変異現象が生起し、諸行が自然に滅壊すると説かれる。

諸行が生起する因縁は法の変異であり、法の滅壊ではない。滅壊した後には法が無く、諸行も無い。諸行の滅壊はまた無常と苦を表すのである。