『阿毘達磨倶舎論』第二十三巻(二)
原文:論に曰く。修習総縁共相法念住。漸次に成熟して乃至上上品に至る。此の念住より後に。順決択分有り。初善根生ず。名けて暖法と為す。此の法は暖の如し。暖法の名を立てん。是れ能く惑の薪を焼しむ。聖道の火の前相なり。火の前相の故に。名けて暖と為す。
釈:ある論説に曰く、一切衆生の五蘊の苦・空・無常・無我という共相を総縁して法念住を修習すれば、その智慧は漸次に成熟し、上上品に至るまでに至る。法念住を修習し終えた後には、順決択分が生じ、四聖諦の理に随順し、最初の善根が出生する。この善根を暖法という。この智慧は温暖の相の如く、心が四聖諦によって薫習され、四聖諦に向かうが故に、暖法と名付けるのである。暖法は譬えば、煩悩惑の薪を焼き尽くすことができ、聖道の火が現れる前の相貌である。火が燃え上がる前の状態の如く、暖と呼ばれるのである。
見道を火相現前、材薪燃焼の義に譬えるならば、火が現れる前に、最初に温度の変化が生じ、温度が上昇し、暖度が現れる。この時は暖法善根に相当する。温度が絶えず上昇し続け、熱量がある程度に達すると、材薪が燃え、火が現れる。この中間には次第に頂法善根、忍法善根、世間第一法善根を経て、その後初めて見道できるのである。暖法の出現は、行者が四念住と四聖諦を修習することにより、心に既に変化が生じ、四聖諦の理に随順して順決択分を生じさせ、もはや四聖諦の理に抵抗し背くことがなく、四聖諦の理を初步的に受け入れたことにも相当する。
原文:此の暖善根は分位長きが故に。能く四聖諦の境を具に観察し、及び能く十六行相を具に修す。苦聖諦を観て。四行相を修す。一には非常、二には苦、三には空、四には非我。集聖諦を観て。四行相を修す。一には因、二には集、三には生、四には縁。滅聖諦を観て。四行相を修す。一には滅、二には静、三には妙、四には離。道聖諦を観て。四行相を修す。一には道、二には如、三には行、四には出。此の相の差別は。後に当に弁ずるが如し。
釈:この暖法善根は含む修法が多く全面的である、即ちその分位が長いという意味である。暖法現前の段階において、四聖諦の真実の境界を具足して観察し、及び十六行相を具足して修行することができる。五蘊の苦聖諦を観察し、四種の行相:無常・苦・空・無我を修行する。五蘊の集聖諦を観察し、四種の行相:五蘊生起の因、五蘊が如何に集起するか、五蘊が如何に出生するか、五蘊出生の縁は何かを修行する。五蘊の滅聖諦を観察し、四種の行相:五蘊が如何に滅するか、涅槃寂静、涅槃の微妙なる境界、苦を離れるかを修行する。道聖諦を観察し、四種の行相:五蘊を滅するために修する道、修するものが真実の理に契合すること、如何に生を離れて涅槃に趣くか、如何に三界を出離して解脱を得るかを修行する。ここに涉及する全ての修習内容には差別があり、これらの差別相については後で再び弁論する。
回向文:我々のネットワークプラットフォームにおける全ての弘法と共修の功徳を以て、法界の一切衆生に回向し、世界の民衆に回向し、世界の平和を祈願し、戦争起こらず、烽火興らず、干戈永く止み、一切の災難尽く消退せんことを。各国の人民が団結し互助い、慈心をもって相い向かい、風雨順調に国泰く民安んずることを祈願します。一切衆生が因果を深く信じ、慈心をもって殺さず、広く善縁を結び、広く善業を修め、仏を信じ学び、善根を増長し、苦を知り集を断ち、滅を慕い道を修め、悪趣の門を閉ざし、涅槃の路を開かんことを。仏教が永く興隆し、正法が永く住し、三界の火宅を変じて極楽の蓮邦とならんことをお祈り申し上げます。
7
+1