瑜伽師地論十二因縁釈（十七）

問。若し自らの所逼迫、若しくは他の逼迫、若しくは時候の変異、若しくは先業の所引、皆な受を生ずることを得。何ぞ此の中に、但だ触を顕して彼の縁と為すや。答。触は是れ彼の近因なるが故なり。触の所引に由るが故なり。余の縁の生ずる所の受も、亦た触より生ずるが故に、必ず触を離れず。是の故に偏に説く。

釈：問う。もし自らの因縁による逼迫、あるいは他からの外力因縁による逼迫、時節因縁の変異、前世の業行の牽引によって、これらの因縁は全て受覚を生じるのに、何故ここでは触を縁としてのみ受覚が生じると示すのか。答える。触が受覚を生じる最も近接した因縁（他は遠因）であるため、受は触によって引き出されるからである。他の縁によって生じる受覚も触の因縁から発生し、触がなければ他の縁があっても受は生じず、受覚の発生は必ず触を離れない。故に特に触を受の縁と説く。

問。経中にも説く、無明を縁として愛を生じ、愛に順ずる境界も亦た縁と為し得ると。何ぞ此の中に、但だ受を以て縁と為すことを説くや。答。受の力あるが故に、相似の境に於いて、或いは和合を求め、或いは乖離を求む。愚痴の力に由り、ただ諸の受に於いて起尽等の相を、如実に知らず。此れに由りて其の心を制御すること能わず。

釈：問う。経典では無明を縁として愛が生じ、貪愛に順じる六塵境界も愛の縁となり得ると説かれているのに、何故ここでは受のみを愛の因縁と説くのか。答える。受の因縁力によって、似た境遇に直面した時、楽受があれば境界との和合を求め、苦受があれば逃避を求める。無明の力により受の生滅相を如実に知覚できず、心を調御できないため愛が生じる。故に受を愛の縁と説く。

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