瑜伽師地論十二因縁釈（十五）

問。識も名色を縁とする。何故此の中に。但だ行を縁とせよと説くや。答。行は識の雑染縁たり。能く引き能く生ずる後の有の果なるが故に。名色の如くに非ず。但だ所依所縁たるを以ての故に。生起の縁たるなり。

釈：問う。六識も名色を縁として生ずるに、何故ここにただ六識は身口意の行を縁とすると説くや。答え。身口意の行は六識の善悪無記の種子の雑染縁たり。雑染の種子あるいは雑染の六識は能く引き起こし能く生ぜしむる後世の名色の業果の縁なるが故に。故に行は六識の縁たりと説き、能く業種の出現を引き生ぜしむ。名色の如くただ六識の出生の依り所となる増上縁たるに非ず。行は却って六識の所縁縁たり、能く直接に六識の業種の出生を引き起こす。

行縁識、身口意の行雑染なれば、六識も雑染なり、雑染の種子有り、及び後世の雑染の果報有り。但し身口意の行は六識の身口意の行なり、六識無くんば身口意の行無し。故に身口意の行は六識を引き生ずるに非ず、六識の造作する業種を引き生ずるなり。即ち六識の雑染縁を引き生ずるなり。何故身口意の行は雑染なりや。意根の心行は雑染なるが故に、意根の引き生ずる身口意の行は即ち雑染なり、六識は即ち雑染なり、種子及び果は即ち雑染なり。名色の雑染果出生したる後、六識は即ち雑染の名色に依止して出生す。名色は六識を出生する増上縁たり、引き生ずる縁に非ず。

問。名色もまた由る所あり。大種の造る所及び触の生ずる所なり。何故ただ識を縁とせよと説くや。答。識は能く彼らの新生の因となるが故に。彼ら既に生じたる後、或いは正に生ぜんとする時、大種及び触は唯だ彼らの為に建立の因となる。

釈：問う。名色も七大種子より創造され、触の因縁によりて出生す。入胎の時には意触有り、出胎の時には六入処触有るに、何故ここにただ名色は六識を縁として生ずると説くや。答え。六識は名色の新たに出生する因縁たり得るなり。名色出生したる後、或いは正に出生せんとする時、地水火風空識の六大種子及び触は、ただ名色が五蘊となる建立因縁・継続因縁・変異因縁たり得るのみ。両種の因縁は各々名色の出生の前後に作用を起し、その作用に差別有り。引き生ずる因縁の重要な角度より識縁名色と説くが故に、大種と触を名色出生の縁と説かざるなり。

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