智慧により禅定を引き起こすには

智慧によって禅定を引き起こし、定に入るのが非常に速い。その前提条件として、禅定と観行の基礎が比較的しっかりしていることが挙げられます。座禅に着座すると、心は速やかに雑念と妄想を排除することができます。ある法義を心で思考する際、その内包が明晰であれば、速やかに思考に専念でき、次第に集中力が高まります。顕在的な意識の思考を弱め消去していく中で、内心の意根（マナス）はなおも思量し続けますが、言語も音声も文字も伴いません。思考は非常に深遠に及びます。修行を始めた当初は無理を感じ耐え難くとも、慣れるに従って入定が極めて速やかになり、身心ともに非常に快適となります。全身が透徹し、頭脳は明晰で、定から出た後も身心爽快、精神百倍。睡眠の効果よりも遥かに優れています。 

意根の思量過程において観察できるのは、意根は何らかの法義を参照することも、他の法義と比較することも、ましてや推測や想像をすることもない点です。従って意根には比量や非量の思考方式が存在せず、完全に現量の思考のみです。一旦結論に至ればそれは現量の智慧となり、比較的真実性が高く、覆し難く後悔も少ない信頼に値するものです。意識による思考はこれとは異なります。意根の思量には言語・文字・音声が伴わないため、その結論を言語・文字・音声として形成するには意識の助力が必要です。意識を覚醒させ、結論を意識に伝達し、意識が了知した後に言語を組織化して文字や音声を形成します。この際に形成される言語や文字は極めて簡潔・明瞭・透徹・適切なものとなります。 

この過程は比較的複雑で緩慢であり、意識単独の思考に比べ遥かに時間を要します。しかし遅いながらも極めて深遠で究竟しており、自己の真実の智慧を体現しています。従って、もし人が意識による思考を過度に用い、意識思考を主とするならば、文章の執筆や演説は速やかに行え内容も豊富ではあるものの、品質は保証できず、ましてや現量の智慧である保証は全くありません。比量や非量の要素が多く混入し、参照内容も増大します。記憶力は良好に発揮され得ますが、完全に自己の真実の智慧を代表するものとは言えません。故に、良質の食事は遅れを恐れず、また緩慢を気に病むことなく、精緻で美味なることが最も享受に値する所以であります。