我は無始より今世に至るまで
仏陀の全ての宝蔵を盗み取り
愚痴と傲慢をもって己が物とし
一切を計り執着し続けてきた
全てが本来仏陀であることを知らず
自己と我執に囚われ利に目がくらみ
恩を知らず執取に縛られて
業障の深き坑から逃れられず
世々貧困に生生の苦難を負う
我は無始より今世に至るまで
一切を分別して我と執り
我見我慢我愛我痴を審らかに思量し
遍く計って執着してきた
見るを我とし聞くを我とし嗅ぐを我とし
味わうを我とし触れるを我とし識るを我とす
我は全ての事業をなすと執り
一切の法理を弁別すると執り
比類なき徳尊を成すと執ってきた
今こそ知る 実に自己は何者でもない
我は無始より今世に至るまで
根身を執り器界を執り神通を執り
徳能を執り成仏を執り弘法を執り
衆生を度すと執ってきた
今こそ知る 実に自己は無能なり
我は昔より妄りに世俗を執り
今に至るも出世を妄執す
この如き妄執を深く感知し
世尊は我に授記を与え給わぬ
授記を望む偷心死なず
何時か無上の宝座に登らん
今より後 何処へ赴くべきか
窃盗の君子 我は選ばん
心を洗い面を改め
過ちを悔いて新たにす
我が物ならざる一切を返し
清浄裸形 赤きが如く洒脱に
任運逍遥 無為のままに去らん
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