四念処の修行：無明より明知に至る過程

この四念処経は単に禅定を修める経典ではなく、止観同時に運行する経典である。止観の結果として智慧が生じるが、この慧は我見を断つ智慧であり、法眼が清浄となり、心が解脱を得る慧である。いわゆる解脱の慧とは、観察対象となる法をある程度まで知り届けることにより、無明の知から有明の知へと転じ、もとの法に対する不明瞭な無明知が、今や法の真諦を明らかにする明知となり、観る所の一切の法である五蘊身心が生滅・無常・変異・苦・空・無我であると明らかになる時、解脱の智慧が生起し、その後解脱を得るのである。

ゆえに四念処を行じ観るには、心に常に一つの知を保たねばならず、それは心が止まった時の知であって、心が散乱している時の知ではない。この二つの知は区別があり、心が止まった時の知には意根の知があり、心が散乱している時は意識が散乱している知である。散乱の知はすべて無明知であるが、心が止まった時の知は無明が次第に減少し、無明知から次第に明知へと転じ、智慧を開いて解脱を得ることができる。心が散乱している時の知はすべて意識の機能作用が現れているに過ぎず、心が止まった時の知には意識が明瞭に知る働きだけでなく、意根がはっきりと了知する働きがあり、意根の思量作用がある。これによって初めて我見を断ち、法眼が清浄となるのである。これは仏教が我々に与えた修行方法であり、意識心で思惟・分析・考量・比量・推理する方法は一切用いない。すべての法は現量として存在し、本来このようなものであるから、ただひたすら知り続けて一定の時に至れば、世間の真諦を明らかにすることができるのである。