意根不可思議の慧

五識に貪厭の心行あれば、即ち五識に欲心所あることを示す。意根に貪厭の心行あれば、意根に欲心所あることを示す。所縁境に対し領納性を有し、智慧の出生あれば、勝解心所あることを示す。法を念じ得るは、念心所有ることを示す。法上に定まり、了別慧の生起あれば、定心所あることを示す。分別の智慧有り、相応の抉択力有れば、慧心所あることを示す。

意根の慧心所は不可思議なり。念仏を唱えて修定を導く時、気力足らざるに当たり、意根突然に低音に改むるを決定すれば、音調即時に改まり、意識なお覚知せず。意根と如来蔵の二つ和合して一切の法の生起・運作・変化を決定すること多く、六識覚知せざる場合多し。それ意根の慧は真に不可思議、随時に一切法を了知し、機に応じて変じ、如来蔵はその歩調に寸分違わず追随す。

色身が某の栄養を必要とする時は、特にこの栄養食品を好んで食し、摂取吸収容易なり。色身が某の養分を必要とせざる時は、色身は排斥して食を好まず、摂取せず。意根と如来蔵この二者、究竟何を企むや、意識は真に想像すべからず。

故に我等考えてみよ、意根の了別慧は皆かくも低劣なるか。必ずしも然らず、何れの方面に在るかによる。六塵の細相具体的内容を了別する時は智慧不足なり、しかも意識を以てその缺陷を補足し得。他の方面においては、意根の智慧なお甚だ強し、故に意根は伶俐なりと説く。もし意根の慧真に低劣ならば、如何にして五陰身をして刹那に反応せしめ、緊急事態に対応し、随時に色身を調節し、周囲の生活環境に対応せしめ得んや。意根は先ず色身の状況を了別し、その後六識を指揮して造作せしむ。

既に意根と如来蔵の二者永遠に相共にして狼狽為奸するならば、意根を証得し禅定具足する時、意根の全ての心行する処に於いて如来蔵を捉え得べし。これ即ち甚深なる唯識開悟の法門なり、その後その智慧は極めて深細ならん。初禅定を修出するや、禅宗三関一躍して過ぎ、初地に入るは指日待つ可し。修行は一大阿僧祇劫を超越せん。慧根ある久修の大菩薩たちはこの決心・毅力・勇気を有すべし。悟らんと欲せば識心より悟り、仏法の究竟処に悟入し、八識の和合運作を観察し得、速やかに唯識種智を生起し、将来如来家業を分担する能力を備え、仏教の中流砥柱と成らんことを。