無辺王自ら善根の力を試す
原文:大王よ。かの無辺称王はこのように思惟した。我今さらに試みん。自らの善根の力をもって四天下の一切の人民に、もし願いあるものはその意に違わず如意を得しめん、と。この念いをなすや、彼の四天下の所有する人民の一切の希求は皆如意を得たり。
釈:仏は説きたまう。大王よ、無辺称転輪王は再び念いを起こした。我今自らの善根の力の大きさを見極めんと、四天下の全ての人民が願いを求めれば、その心のままに違わず何でも得られるようにしようと。この念いを起こすや、四天下の人民の全ての願いはことごとく成就した。
四天下の数を数え尽くせるか。数えきれない。今ただ南瞻部洲の人口だけでも数十億、他の三大洲の人数はさらに多い。一人ひとりの願いをことごとく如意に叶えるこの念力の大きさは、衆生を利楽するものというべきである。無辺称王がこの念いをなした後、四天下の人民は求めるものが真に得られた。今の世では衆生の福徳薄く、転輪聖王の出現を感得せず、もはや転輪聖王はいない。
原文:大王よ。かの無辺称王はさらに思惟した。我が所有する善根の力をもって四天下に妙なる花を普く降らしめん、と。この念いをなすや、四天下に種々の上妙なる天華を降り注がしめた。
釈:仏は説きたまう。大王よ、無辺称王は再び心に念う。我が善根の力をもって四天下に普く妙なる花雨を降らせんと。この念いを起こすや、四天下には様々な殊勝なる天華が雨のように降り注いだ。
地上の花は天上の華に比べ粗相であり、天上の華は香りも色彩も人間界の比ではない。しかしながら、無辺称王はこの行為に無量の福徳を費やした。無量の諸仏のもとで積んだ福徳を全て現前させ、蔵に蓄えを残さず、一旦如来蔵に貯えがなくなれば福徳は消滅し、全ての所業は成就しなくなる。故に仏法を学ぶ者は安易に福徳を消耗せず、成仏の用に備えるべく福徳を蓄えるべきである。
原文:大王よ。かの無辺称王はさらに思惟した。我が所有する善根の力をもって四天下に妙なる宝衣を降らしめん、と。この念いをなすや、四天下に悉く宝衣を降らしめた。
釈:仏は説きたまう。大王よ、無辺称王は再びこのように念う。我が善根の力をもって四天下に妙なる宝衣の雨を降らせんと。この念いを起こすや、四天下にはことごとく宝衣の雨が降り注いだ。
原文:大王よ。かの無辺称王はさらに思惟した。我が所有する善根の力をもって四天下に悉く銀を降らしめん、と。この念いをなすや、四天下に皆銀の雨を得しめた。
釈:仏は説きたまう。大王よ、無辺称王はさらに次のように念う。我が善根の力をもって四天下に白銀の雨を降らせんと。この念いを起こすや、四天下にはことごとく白銀が雨のように降り注いだ。彼の貪欲は次第に増大し、この念いをなすや天上は真に銀の雨を降らせた。
原文:大王よ。かの無辺称王はさらに思惟した。我が所有する善根の力をもって四天下に黄金の雨を降らしめん、と。この念いをなすや、四天下に皆黄金の雨を降らしめた。何が故か。皆無辺称王が往昔に諸々の衆生と共に善業を修したことにより獲得したところのものなり。
釈:仏は説きたまう。大王よ、無辺称王はさらに次のように念う。我が善根の力をもって四天下に黄金の雨を降らせんと。この念いを起こすや、四天下にはことごとく黄金の雨が降り注いだ。何故このようなことが可能であったか。この転輪聖王が過去世において無数の衆生と共に善業を修め、その果報としてこのような力を得たからである。
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