催眠療法とは、被催眠者が誘導によって潜在意識の深層に到達する過程を指します。この状態において被催眠者の潜在意識における防衛機制は大幅に解除され、誘導による癒やしが容易に深層意識レベルに到達します。一方、覚醒状態では防衛機制の有効な保護作用により、深層への到達が困難となります。
この意味するところは、覚醒状態において意識心が非常に活発に活動し、第七識である意根(末那識)の我執性に基づいて自我に対する計画、打算、利害得失の計算などを展開し、いわゆる自我を効果的に保護しているため、意根の朴直性や無打算性が発揮されないことです。意根が我を執着する際には強力な手段を有しています。意識が微弱になると、意根は我を執着する強力な手段を失い、朴直性・率直性・幼稚性・原始性・被誘導性を表出するようになります。
催眠状態では、意識の思考分析活動が抑制され、思考・分析・判断・設計・打算が不能となり、防衛機制が消失します。このため意根に分析思考報告を提出できず、意根を導き制御することができず、意根の参謀役を務められなくなります。これにより意根の自己防護能力は失われ、自身の利益を守るための嘘を意識に指示することもできず、事実のありのままを意識が語る状態となります。同時に意根は外界の要因に誘導されやすく、善に遇すれば善となり、悪に遇すれば悪となり、境界に従って流転します。この時、外部の力を以て意識に代わり意根を導き、意根が外力の啓発と誘導に従って変化するよう促せば、自我の潜在能力が発揮され、心霊が覚醒し、精神的な疾患が治癒され、心理的健康が促進されます。
防衛機制とは、意根が意識心の打算・巧善・分析・計算などの機能を介し、一定の手段・方法を講じて自己を保護するものです。しかし意根自体は思考分析や手段の計画ができず、必ず意識の分析思考に依存し、意識の献策を通じて自己保護の方策を決定した後、六識を指揮して自己を保護します。
意根は刹那刹那に自我保護を欲しますが、意識の助けがなければ無力です。意根には仕組みがなく、智慧が劣っているため思考打算ができず、計算もできません。意識の邪な指導がなければ、意根は極めて朴直に振る舞い、嘘もつかず、人を騙さず、計略も打算もなく、いわゆる自己保護を行えません。意識の自己防衛は意根の我執から離れず、防衛計画は意根の承認を得て初めて実行可能となります。もし意根が意識の指導・教化を受けなければ、意根単独では何ら防衛できず、計算も打算も悪巧みも婉曲な自己隠蔽もできず、完全に慣性に従って行動し、朴直で愚直な様相を示します。
催眠により意識が潜在意識に入ると、意根の知性と前世との連関が顕著に現れ、意根が過去世の事柄を浮上させる可能性があります。意根は過去世の無量劫と繋がり、決して滅することなく、過去世の業種(ごうしゅ)との連関は意識よりもはるかに密接です。ただし表現手段を持たないため、意識はこれらの事柄を理解できず、我々も知ることができません。これが隔陰の謎です。催眠によって意識心自体も知らない過去世の事象が顕現しますが、これは意根が明らかにするものです。意根には極めて多くの秘密が存在しますが、意識は通常認識できず、また意根自体は名言(概念表現)を持たないため、自らを表現できません。従って意識はこれを了別(認識)することができないのです。
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