夢の中で美味なる御馳走を見ることは実有でしょうか。
原文:大王よ。例えば、ある人が眠りの夢の中で飢えと渇きに迫られ、様々な美味なる料理に出会い、心のままに飲食したとしましょう。どう思われますか。この人が目覚めた後、夢の中の美味を思い続けることは、実有と言えるでしょうか。王は答えました。『そうではありません』。仏は言われました。『大王よ、この人が夢の中のことを実有だと執着するのは、賢明であると言えるでしょうか』。王は答えました。『そうではありません、世尊よ。なぜなら、夢の中にはそもそもあの美味なる食事など存在せず、ましてやそれを食することなどありえません。この人はただひたすら心を疲れさせただけで、実在するものなど何もなかったと知るべきです』。
釈:仏は言われました。「大王よ、例えば人が眠りの夢の中で飢え渇きに苦しみ、美味なる料理に出会って思うままに食べたとします。あなたはどう考えますか。この人が目覚めた後、夢の中の美味を思い続けることは実在するのでしょうか」。浄飯王は答えました。「実在しません」。
仏は続けられました。「大王よ、この人が自分の夢を実在だと執着するのは、智慧ある者と言えるでしょうか」。浄飯王は答えました。「智慧ある者ではありません、世尊よ。なぜなら、夢の中にはそもそも美味なる食事など存在せず、まして飲食を楽しむことなどないからです。この人はただ空しく心を労しただけだと知るべきです」。
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