父子合集経講記（一四一）

夢の中の死骸は実在するものでしょうか。

原文：大王様。人が夢の中で、死んだ蛇や死んだ犬、人の死骸が自分の首に巻き付いているのを見て、恐怖心を生じるようなことがあります。どうお考えになりますか。この人が目覚めた後、夢で見たことを思い出しても、それは実在するものでしょうか。王は答えました「いいえ」。仏は言われました「大王様、この人が夢を見たことを実在だと執着するのは、賢明な人と言えるでしょうか」。王は答えました「いいえ世尊。なぜなら、夢の中にはそもそも死んだ蛇など存在せず、ましてや首に巻き付くことなどありえません。この人はただ空しく心を悩ませただけで、実体など全くないのです」。

釈：大王様、あたかも人が夢の中で死んだ蛇・死んだ犬・人間の死骸が自分の首に縛り付けられているのを見て、恐怖心を生じるようなものです。どうお考えになりますか。この人が目覚めた後も、夢で見た恐ろしい情景を思い浮かべる時、その夢の中の光景は実在するのでしょうか。浄飯王は答えました「実在しません」。

仏は言われました「大王様、この人が夢で見たことを実在だと執着するのは、智慧ある者と言えるでしょうか」。浄飯王は答えました「智慧ある者ではありません、世尊。なぜなら、夢の中にはそもそも死んだ蛇や犬など存在せず、ましてや首に縛り付けることなどできようはずがありません。この人はただ無駄に心を苦しめただけで、実体など全くないのです」。