父子合集経講話録（一二六）

慢心は愚痴に由来する

無明が少なければ少ないほど、自らの無明を知り謙虚になり、無明が多ければ多いほど、自らの無明を知らず驕慢になります。衆生が慢心を抱く原因は何か。無明、すなわち愚痴によるものです。煩悩を断じる順序において、貪りと瞋恚は愚痴無明よりも断じ易く、最も容易なのは貪り、次いで瞋恚、我見を断じて初禅を証得する際にまず貪りを断ち、修行を重ねて瞋恚を断じ、その後一念無明を断じます。大乗初地の菩薩に至ると、貪・瞋・慢の煩悩習気と塵沙無明を断ち始め、塵沙無明を断尽すれば仏となります。修行の各段階において無明の程度と種類は異なり、明心前の菩薩・明心後の菩薩・入地後の菩薩は、それぞれの果位に応じて様々な愚痴と無明を有し、九地菩薩や十地菩薩でさえ微細な愚痴惑を留め、仏果を得て一切種智を成就する時に至って初めて、心中の全ての無明惑が消滅するのです。