父子合集経講話（一一一）

何故に一切の法には来処も去処もないのか

原文：大王よ。些細な法といえども、この世より他世に至るものはない。その故はいかに。自性は生滅するがゆえなり。大王よ。身識が生ずる時、来る所なく、滅するに去る所なし。かの業が生ずる時、来る所なく、滅するに去る所なし。初識が生ずる時、来る所なく、滅するに去る所なし。何を以ての故にか。自性は離れたるがゆえなり。かくの如く了知せよ。身識は身識空なり。自業は自業空なり。初識は初識空なり。若し滅すれば滅は空なり。若し生ずれば生は空なり。業の転変を了知し、作者なく、また受者なし。ただ名相のみありて、分別を顕示する。

釈：仏は説かれた。「大王よ、いかなる法もこの世から来世へ流転することはありません。なぜそう言えるのか？一切の法の自性は生滅を繰り返し、常住不変ではないからです。臨終に五陰が滅び去る時、一切の法はことごとく滅び去ります。大王よ、身識が生起する時、来処はなく、滅する時も去処はありません。業を造作する時、その業行に来処はなく、業行が滅び去る時にも去処はありません。来世の最初の識心が生起する時、来処はなく、滅する時も去処はありません」

何故に一切の法には来処も去処もないのか？一切の法は一切の性を離れ、一切の法の自性には一切の相がなく、自体の性質は空であり、了不可得だからです。空で不可得な法に、来去があるはずがありません。このように身識を了知すべきです。身識の自性が空であることを了知し、このように自らの識心が造作する業行を了知し、業行の自性が空であることを了知し、このように初識を了知し、初識の自性が空であることを了知すべきです。このように了知すべきです。一切の法が生じればその生は空であり、一切の法が滅すればその滅もまた空です。同時に業行の造作と流転には作者もなく受者もないことを了知し、一切の法はただ仮相と名称による分別の顕現に過ぎないことを明らかにすべきです。