瑜伽師地論 第十巻（十二因縁）

（二十）問。若し法が無明を縁とするならば、彼の法は行なるや。設え行なりとせば、彼は無明を縁とするや。答。四句に作すべし。或いは行にして無明を縁とせざるあり。無漏及び無覆無記の身語意行を謂う。或いは無明を縁とし乍ら行に非ざるあり。行の摂する所の有支を除き、余りの有支を謂う。或いは亦無明を縁とし亦是れ行なり。福・非福・不動の身語意行を謂う。此の如き相を除くは是れ第四句なり。 

釈：問：もし法が無明を縁として生ずるならば、この法は行と言えるか。もし行であるならば、その行の生起は無明を縁とするか。

答：この問題は四句に分けて答えるべきである。第一に、無明を縁としない行がある。例えば無漏行や無覆無記の身口意行である。第二に、無明を縁として生じるが行ではない法がある。行支に含まれる有支を除く他の有支、すなわち識・名色・六処・触・受・愛・取・有・生・老死支などである。第三に、無明を縁とし且つ行に属する法がある。福徳ある身口意行、非福徳の身口意行、不動の身口意行（非福非非福の清浄行）がこれに当たる。第四に、これらの法相を除く全ては第四句に含まれる。 

無漏業行は既に十二因縁の範疇に属さず、十二因縁を超え、無明によって引き起こされる行ではない。無覆無記の身口意行も無明に属さず、十二因縁を超えるため、生死の業と果報を生じない。十二因縁中の十一支分は全て無明に属し、無明を含むが、無明が行支を生じる関係が最も直接的である。他の支分への関与は比較的間接的であるため「無明を縁として行が生ずる」と説かれる。無明に属する行支の中では、福業を造る行も無明に属し、四聖諦や実相の理を明らかにせず、有漏の福業を求める行は即ち無明の行である。悪業を造る非福行は更に無明に属する行であり、外道の修める四禅不動心の行も、解脱の理を明らかにせずに修する故に、無明に由る行である。