瑜伽師地論 第十巻（十二因縁）

（十七）原文：問。如何にして愛望取は三種の縁となるや。答。欲貪と共に行われ、随順取法において欲楽を安立するが故に、倶有縁となる。無間滅の勢力が転ずるが故に、生起縁となる。当来を建立し、解脱し難き彼の相続するが故に、久遠滅の引發縁となる。

釈：問：何故愛縁取には三種の縁があるのか。答：欲貪が取と常に相伴い、随順取法の過程において欲楽に執着する心行があるため、愛は取の倶有縁である。愛の無間断滅する勢力が運転する故、取の生起縁となる。未来世において愛が相続して生起し解脱を得難いため、久遠劫にわたる引發縁となる。

原文：問。如何にして取望有は三種の縁となるや。答。彼と倶なるにより、業が諸趣の果を招く能きをなすが故に、倶有縁となる。又彼の力により、此の生処において識等を引き能うが故に、無間滅生起縁となる。更に彼の界の功能を引發するが故に、久遠滅引發縁となる。 

釈：問：何故取縁有には三種の縁があるのか。答：心行が常に取と相伴い業が六道輪廻の果報を招くため、取は有の倶有縁である。取の勢力により生処において六識等を引き起こす故、無間滅生起縁となる。三界有の各支分の功能を引發する故、久遠滅引發縁となる。

原文：問。如何にして有望生は三種の縁となるや。答。彼の種子を熏発するが故に、倶有縁となる。彼の勢力により無間随転するが故に、生起縁となる。久遠滅すれども果転するが故に、引發縁となる。有望生の如く、生望老死の縁も亦た然ることを知るべし。 

釈：問：何故有縁生には三種の縁があるのか。答：有が生の業種を熏発するため倶有縁となり、三界有の業行は全て来世生の縁となる。有の勢力が無間断に運転する故、生起縁となる。三界有が久遠劫後に滅しても果報が続くため、引發縁となる。有縁生の道理は生縁老死も同様に三種の縁を具える。