大王。内空界とは何か。
原文:大王。内空界とは、この身の内なる皮・肉・血などが現れ増長し、質礙性を離れることをいう。即ち眼窩・耳孔・顔面の門・咽喉、飲食を飲み下ろす際に引き込まれる滋味が、腸胃の間を通じて徹して出づる所なり。
釈:仏は説かれた。大王よ、内空界とはこの身の内なる皮・肉・血などが、質礙性なく増長を顕現する状態を指す。質礙性ある皮肉や筋骨は成長を制約される。眼窩・耳孔・鼻孔・咽喉などの空虚なる部位が空界である。飲食を摂取した後、食道を通じて腸胃に入り、消化されて排出される過程において、口腔から食道・胃・大小腸に至る通路こそが空界であり、質礙がない。質礙があれば空ではなく、飲食は体内に入れず、まして排出され得ない。
空界とは虚空を指し、何物も存在せぬ空虚を意味する。内身に皮・血・肉がなく阻害のない状態が空である。血管に空間あれば血液は流れ、気管が空虚なれば呼吸が可能となる。腸胃に空界あれば食物は流動し、体内に空間あれば気体・液体・飲食・排泄物が流通し、細胞分裂が生じ、筋肉筋骨が成長する。
細胞内の空隙において、各微粒子は固有の軌道を運行する。電子・陽子・イオン・核子などの粒子間に空隙あるが故に物理化学反応が発生し、細胞分裂と増殖が可能となり、色身は変化する。細胞間の空隙により、呼吸する酸素が体内細胞に入り血液を生成し循環する。これら一切の空隙を内空界と称する。
六処とは色声香味触法を指し、各色法は地水火風の四大に加え空大を含む五大で構成される。色法内の空間大小と空大の比率により物質密度が異なり、物理的性質が決定される。
これら六処の色法は全て六識心に顕現し、後脳の勝義根に成像する内六塵に属す。勝義根の空は内空界に包含される。内空界の来処なく、去るに方所なし。
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