問:認知症を患った人は、なぜ身近な最も慣れ親しんだ人を覚えていられないのでしょうか。
答:慣れ親しんだ人が必ずしもその人にとって最も興味のある人や重要な人とは限らないため、認知症患者は思い出せず記憶に留められないのです。
勝義根に問題が生じた後も、高齢者は過去の出来事については依然として鮮明に記憶しており、幼少期の古い出来事を回想する傾向があります。一方で近年の人事については印象が薄く、自身が最も気にかけ好む人々に関しては記憶と興味を保持しますが、他の人々については印象が残りません。加齢に伴い勝義根が徐々に変異するため、記憶機能が次第に減退し、多くの人事を覚えていられなくなるのです。若い頃や子供時代の事柄は既に如来蔵に保存されており、第六識・第七識に疾患がなければ回想可能ですが、晩年の事柄は記憶が曖昧なため想起できません。
深く心に刻まれた出来事は、晩年になるほど鮮明に蘇り、忘れようとしても忘れられません。記憶の深浅は完全に意根によって決定され、意根が興味を持たない事柄は、意識が記憶しようとしても留めることができません。認知症の人があなたを認識できず記憶できないのは、あなたがその人にとって重要でないことを示しています。その人が口にし心に念じ続ける人物こそ、最も重要で興味を抱く存在なのです。また認知症患者には選択的な記憶と健忘が存在し、これは縁(因縁)に関係するとともに、当時の脳の状態にも関係しています。ある人が意識の表層であなたを口にするか、それとも意根の深層であなたを心に留めているかは、仏法を学んだ今となっては容易に判別できることでしょう。
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