寺院においては、いかなる物であれ寺院で使用されるか否かにかかわらず、在家信者は決して勝手に持ち出したり使用したりしてはなりません。寺院の全ての物品は十方僧の物(じっぽうそうのもつ)に属し、娑婆世界(しゃばせかい)を超えた他方世界の僧侶を含む、十方世界の僧侶が享受する権利を持っています。個人がこれを持ち出せば、盗んでいるのは十方世界の出家者の物品であり、これは根本的に償いきれない罪となります。この罪は地獄の業(ごう)、無間地獄(むけんじごく)の業にすらなります。
十方供養(じっぽうくよう)とは、娑婆世界を中心点とする十方(東・南・西・北・上・下・東南・西南・東北・西北)の衆生による供養を指します。十方僧物とは、この十方の世界の出家者の物品です。世界には大小があり、大いなる世界とは娑婆世界を取り囲む十方の仏国土(ぶっこくど)を指し、小さい世界とは娑婆世界内の十方の小世界を指します。娑婆世界の一小世界には、四大洲(しだいしゅう)・四大海(しだいかい)・七金山(しちこんざん)・四天王天(してんのうてん)・忉利天(とうりてん)・兜率天(とそつてん)・夜摩天(やまてん)・化楽天(けらくてん)・他化自在天(たけじざいてん)、および初禅天(しょぜんてん)が含まれます。一千の小世界が一中千世界(いっちゅうせんせかい)となり、一千の中千世界が一大千世界(いだいせんせかい)となります。
この罪業を犯した者は、仏前において殷重(いんじゅう)に懺悔(さんげ)し、好相(こうそう)が見えるまで続けなければなりません。そうして初めて、この三宝物(さんぼうもつ)を盗む罪業が消滅します。例えば、仏が来て頭を撫で慰めて罪業が消えたと告げられる、蓮華が開くのを見る、空中の香りを嗅ぐ、夢に仏菩薩が現れ加持(かじ)を与えるなどの殊勝(しゅしょう)な境相(きょうそう)が好相です。そうでなければこの罪業は残り、命終(みょうじゅう)すれば地獄に堕ちて報いを受けることになります。
故意または過失により寺院の物品を浪費することは、十方僧物を浪費消耗することであり、この罪も小さくありません。十方の僧に借りを作ることで、容易には償いきれません。ですから、寺院にいる者は皆、倹約し浪費せず、物を壊したら必ず直ちに弁償しなければなりません。期限が過ぎれば倍額または多倍の弁償が必要です。戒経(かいきょう)には、もし人が戒を犯して懺悔せずに一夜過ごせば罪業は倍増し、二夜過ごせばさらに倍(合計四倍)になると説かれています。三宝への負債も同様で、夜を越えれば倍増します。かつて寺院のいかなる物品でも私的に持ち出した者、または物品を破損・浪費した者(水道光熱費なども含む)は、自ら償い弁償する方法を考えなければなりません。窃盗の性質を持つものについては、弁償だけでなく、必ず毎日努力して殷重に懺悔し、好相を見ることを目指さねばなりません。悪業を消滅させ、悪報を受けない、あるいは少なくするためには、第一に懺悔、第二に金銭財産による補償を含む救済(ぐさい)が必要です。
寺院に来る在家信者の中には、お師匠様(おししょうさま)が望むか許すかに関わらず、自ら全ての権力を奪い取り、何でも勝手に決めてしまう者がいます。まるで自分の家のように、事務管理だけでなく金銭管理、さらには人(僧侶)までも管理しようとします。僧侶の権利を剥奪(はくだつ)するこの罪業は非常に大きく、懺悔によって清浄にできるかどうかも定かではありません。寺院に来て出家者まで管理しようとする者さえいます。出家者が何をすべきか、すべきでないかを自分の指示に従わせ、自らが企てたことを出家者にさせて、自分の貪欲(とんよく)や支配欲を満たそうとします。これは下位の者が上位を犯し、三宝と三宝の尊厳を蔑(ないがし)ろにする行為です。出家者は如何なる在家者にも管理・指使(しし)されません。出家者本人の師父(しふ)のみが管理教育する権限を持ち、また所在する寺院の住持(じゅうじ)や出家の管事者(かんじしゃ)が管理する権限を持っています。
出家衆(しゅっけしゅう)は主に十方の諸仏菩薩の教育と管理を受けるものであり、土地神などの護法神(ごほうしん)でさえ資格も権力も持ちません。出家者は直接、仏陀の弟子であって護法神の弟子ではないからです。出家者は仏菩薩のみを拝礼(はいれい)し、護法神を拝礼してはなりません。ですから、在家者の権力欲が強すぎる場合は、出来る限り自制すべきです。どうしても自制できないなら、寺院から離れ、出家衆から遠ざかり、地獄の業を造り地獄の苦しみを受けることを避けるべきです。
また、在家者の中には、出家服を好んで着たり、出家者の名前を使いたがる者がいます。さらに、恭敬(くぎょう)や様々な供養を得るために出家者を騙(かた)る者もいます。これは盗みの中の大盗です。また、「自分も三宝である」と主張して三宝の待遇を要求する在家信者もいます。これは三宝の名誉名声を侵害する行為であり、影響は甚だしく悪く、大貪大盗(だいとんだいとう)に属します。これは懺悔が通じず、懺悔しても大して役に立たず、やはり地獄に赴くことになります。
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