優婆塞五戒相経 第四節 原文:仏は諸比丘に告げた。私は様々な言葉をもって妄語を呵責し、不妄語を賞賛する。戯れ笑う中でさえも妄語をすべきでない。ましてや故意に妄語を犯すなどなおさらである。ここに犯すとは、もし優婆塞が知らず見ずして、人並み外れた聖なる法(境地)を得たにもかかわらず、自ら「私は阿羅漢に向かう者(向阿羅漢)である」または「私は阿羅漢である」と言うならば、不可悔罪を犯す。もし「私は阿那含である」「私は斯陀含である」「私は須陀洹である」または「私は須陀洹に向かう者(向須陀洹)である」と言い、あるいは初禅、第二禅、第三禅、第四禅を得たと言うならば(同様である)。
釈:仏は諸比丘に、私は様々な言葉や譬えをもって妄語者を呵責し、不妄語で誠実な人を賞賛すると告げた。全ての衆生は互いに冗談を言い合うような時でさえ妄語をすべきではなく、ましてや故意に妄語を犯してはならない。いわゆる妄語戒を犯す者とは、もし五戒を受けた優婆塞(優婆夷)が、阿羅漢のような凡夫を超えた聖人の境地に自らが達したことを知らず、また見てもいないのに、人に対して自分は向阿羅漢であるとか阿羅漢であると言うならば、不可悔罪を犯すのである。同じく、もし優婆塞が自分は阿那含、斯陀含、須陀洹、あるいは向須陀洹であると言うならば、不可悔罪を犯す。もし優婆塞が自分は初禅、二禅、三禅、四禅を証得したと言うならば、大妄語の不可悔罪を犯す。
原文:もし慈悲喜捨の四無量心を得たと言い、あるいは無色定、虚空定、識処定、無所有処定、非想非非想処定を得たと言い、あるいは不浄観、阿那般那念(安般念・数息観)を成就したと言い、諸天が私の所に来たと言い、諸龍、夜叉、薜荔(へい)・毘舎闍、鳩槃荼・羅刹が私の所に来たと言い、彼らが私に問い、私が彼らに答え、私が彼らに問い、彼らが私に答えたと言うならば、皆、不可悔罪を犯す。もし本来、阿羅漢と言おうとして誤って阿那含と言った者は、中可悔罪を犯す。その他の場合も同様に犯す。
釈:もし優婆塞が自分は慈・悲・喜・捨の四無量心を証得したと言い、あるいは自分は無色定を証得した、虚空定を証得した、識無辺処定を証得した、無所有処定を証得した、非想非非想処定を証得したと言い、実際にはその事がなければ、皆、不可悔罪を犯す。もし自分は不浄観を修め成就した、安那般那念を修め成就したと言い、実際にはそうでなければ、不可悔罪を犯す。
もし諸天神が私の住処に来た、諸龍、夜叉、乾闥婆、毘舎闍、鳩槃荼、羅刹が私の住処に来て、私と対話し、彼らが私に問いかけ、私が答え、あるいは私が彼らに問いかけ、彼らが答えたと言うならば、これらの妄語は皆、不可悔罪を犯す。もし本来、自分は阿羅漢だと言おうとして誤って自分は阿那含だと言ったならば、中等の可悔罪を犯す。誤って二果の斯陀含や初果の須陀洹であると言った場合も同様に、不可悔妄語罪、あるいは中等の可悔妄語罪を犯す。
故意の大妄語は不可悔罪を犯し、故意でない大妄語は可悔罪を犯す。誠心誠意懺悔すれば大妄語罪は消滅する。大妄語罪は上・中・下の三種の程度に分かれ、上等は不可悔罪、中等と下等は可悔罪である。下等は誠心懺悔すれば完全に消滅するが、中等は懺悔しても完全に消えないことがあり、上等は懺悔しても無駄で、妄語罪は消滅しない。
原文:もし優婆塞に対し、人が「あなたは得道しましたか」と問うた場合、黙っているか、あるいは相(様子・態度)で示すならば、皆、中可悔罪を犯す。乃ち「旋風土鬼(つむじ風や土の精霊)が私の所に来た」と言うに至るまで、中可悔罪を犯す。もし優婆塞が実際に聞いたのに「聞いていない」と言い、実際に見たのに「見ていない」と言い、疑って有るところを「無い」と言い、無いところを「有る」と言うならば、このような妄語は皆、可悔罪を犯す。もし妄語をしようと心に発し、まだ言わない者は下可悔罪を犯す。言ったが意を尽くさない者は中可悔罪を犯す。もし人に向かって自ら得道したと言うならば、直ちに不可悔罪を犯す。もし狂気のため、あるいは心乱れて、自ら語っていることに気づかない者は、犯さず(無犯)。
釈:もし優婆塞に対し、人が「あなたは得道しましたか」と問うた場合、優婆塞自身は明らかに得道していないのに、口を閉じて説明せず、あるいは相(様子・態度)をもって得道したことを示せば、中可悔罪を犯す。乃ち妄語して旋風土鬼(つむじ風や土の精霊)が私の住処に来たと言うに至るまで、中等の可悔罪を犯す。
もし優婆塞が実際に何かを聞いたのに、自分は聞いていないと言い、実際に何かを見たのに、自分は見ていないと言い、自分は明らかに疑って有るところを無いと言い、自分は無いと惑っているところを有ると言うならば、このような妄語は皆、可悔罪を犯す。
もし妄語しようと心に発し、まだ口に出さないうちは、下等の可悔罪を犯す。口に出した後、言い終わらないうちは、中等の可悔罪を犯す。もし人に向かって自分は得道したと言い、実際には得道していなければ、不可悔罪を犯す。もし心が狂い乱れ、自らが何を言っているか覚知できないならば、妄語罪を犯さない。
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