優婆塞五戒相経 第一節 原文:また一人、手足を截たれ、城塁の中に置かれる。また多くの女人が城に入り来たり、この啼哭の声を聞き、便ち往って観に就く。共に相謂いて言う、「若し人ありてこの人に薬漿を与えて飲ませ、時を得て死なしむれば、則ち久しからずして苦を受く」と。中に愚直の女人あり、便ち薬漿を与う。即ち死す。諸女言う、「汝は戒を犯せり。悔いやまざるなり」と。即ち白す。
釈:ある人が人に手足を切断され、城の堀の中に投げ捨てられた。また一群の女人が城の中へ歩いて入り、啼哭の声を聞き、どうしたことかと見に行った。堀の中の人を見てから互いに議論し言った、「もし誰かがこの人に薬を飲ませ、すぐに死なせてやれば、彼はもう苦しまずに済むだろう」と。この中に愚かで実直な女人がいた。すぐに薬漿を持ってきて堀の中の人に飲ませた。その人は薬を飲んで死んだ。すると他の女人が言った、「お前は戒を犯した。犯したのは悔いやまざる罪だ」と。愚かな女人はすぐに大衆の中で自らの罪を発露し懺悔した。
原文:もし人が賊を捕らえ、殺さんと欲す。賊は逃げ去るを得たり。もし官の力をもって、もし聚落の力をもって、この賊を追逐す。もし居士、道を逆らいて来たり。追う者、居士に問うて言う、「汝は賊を見ずや」と。この居士は先に賊に対して悪心・瞋恨心あり。言葉に、「我は是の処に在りと見る」と。この因縁をもって賊の命を失わしむる者は、悔いやまざるを犯す。
釈:もし誰かが賊を捕らえ、殺そうとしたが、賊は隙を見て逃げた。もし官の力、あるいは村落の力でこの賊人を追いかける場合、居士が追跡の道の反対側から歩いてきて、追いかける者が居士に「賊人を見ませんでしたか?」と尋ねた。この居士は以前から賊人に対して悪意と怒りの心(瞋恨心)を持っていたため、「あの場所にいるのを見た」と答えた。居士が居場所を暴露したことが原因で賊人が捕らえられ、命を失った場合、居士は悔いやまざる罪を犯す。
原文:もし人が多くの賊を連れて殺さんと欲す。この賊は逃げ去るを得たり。もし官の力をもって、もし聚落の力をもって追逐す。この居士、道を逆らいて来たり。追う者、居士に問うて言う、「汝は賊を見ずや」と。この賊の中に或いは一人、この居士の瞋る所の者あり。言う、「我は是の処に在りと見る」と。もし瞋らざる所の者を殺すは、この罪は悔いあり。余は上に説く如し。
釈:もし誰かが多くの賊を捕らえ、皆殺しにしようとしたが、これらの賊人は隙を見て逃げた。もし官の力または村落の力で賊人を追いかける場合、居士が追跡の道から向かい側に歩いてきて、追いかける者が居士に「あの賊人たちを見ませんでしたか?」と尋ねた。それらの賊人の中にたぶん居士が怒りを抱いている(瞋恨している)者が一人いたため、居士は「あの場所にいるのを見た」と言った。結果、それらの賊人が捕らえられたが、もし官が居士が怒りを抱いていない者を殺した場合、居士は悔いやむことのできる罪(可悔罪)を犯す。その他は前記と同じであり、参考にできる。
居士はなぜ悔いやむことのできる罪(可悔罪)を犯したのか? 居士の本意はそれらの人々が死ぬことを望んでおらず、それらの賊人の死は彼の意図せざる結果によるものであるため、その罪は懺悔可能である。もし彼が怒りを抱いていた(瞋恨していた)あの者が殺された場合、居士は悔いやまざる罪(不可悔罪)を犯す。これは居士が望んだことであり、主観的な意図があったためである。
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