優婆塞五戒相経第一節原文:また堕胎するものあり。胎ある女人に吐下薬を与え、及び一切の処に薬を灌ぎ、若しくは血脉に針し、乃至涙を出さしむる薬を用う。かくの如き念いをなす『この因縁をもって女人を死せしめん』と。死者は悔い改められざる罪を犯す。即時に死せずして、後にこの因縁によりて死すれば、これもまた悔い改められざる罪を犯す。即時に死せず、後に因って死せざれば、これ中罪悔い改め可し。若し母を殺さんがために胎を堕すに、母死すれば悔い改められざる罪を犯し、胎死すればこれは悔い改め可き罪なり。俱に死すればこれは悔い改められざる罪なり。俱に死せざればこれ中罪悔い改め可し。若し胎を殺さんがために堕胎の法を行い、胎死すれば悔い改められざる罪を犯し、胎死せざればこれ中罪悔い改め可し。母死すればこれ中罪悔い改め可し。俱に死すればこれは悔い改められざる罪を犯す。これを堕胎殺法と名づく。
釈:堕胎殺の場合について再説する。妊娠中の女性に吐瀉薬を与え、あるいはあらゆる経路から瀉下薬を注入し、血管に針を刺し、涙を催す薬を用いるなどして、『この手段によって女性を死に至らしめよう』と念じる場合、女性が死亡すれば優婆塞は悔い改められない罪を犯す。即死せず後日これらの薬により死亡した場合も同罪となる。即死せず後日死亡しなければ中程度の悔い改め可能な罪となる。母を殺害する目的で堕胎を施し、母が死亡すれば不可悔罪、胎児が死亡すれば可悔罪、双方が死亡すれば不可悔罪、双方が生存すれば中罪可悔となる。胎児殺害を目的に堕胎法を施行した場合、胎児が死亡すれば不可悔罪、生存すれば中罪可悔、母が死亡すれば中罪可悔、双方が死亡すれば不可悔罪となる。これが堕胎殺法である。母を殺す際に胎児が死亡した場合、優婆塞が可悔罪となる理由は、胎児を殺す意図がなく母に連帯して死亡したためである。胎児を殺す際に母が死亡した場合に可悔罪となるのも同様に、母を殺す意図がなく胎児に連帯して死亡したためである。
7
+1