優婆塞五戒相経 第一節 原文:煙の出ない火の穴による殺害。もし優婆塞が、この者がこの道から来ると知り、その途中に煙の出ない火の穴をあらかじめ作り、砂土で覆い隠す。もし口で「この者がこの道から来るゆえ、私はこの穴を作った」と言う。もしこの者がそれによって死んだならば、これは不可悔の罪を犯したことになる。もし即死しなかったが、後にそれによって死んだならば、不可悔の罪を犯したことになる。もし即死せず、後にそれによって死ななかったならば、これは中罪可悔である。
釈:煙の出ない火の穴を用いて殺害する場合とは、優婆塞が殺害されるべき者が特定の道から来ると知り、道中に煙の出ない火の穴をあらかじめ用意し、砂土で覆い隠した後、口で「この者がこの道から来るゆえ、私はこの火の穴を設置した」と言うことである。もしその者が火の穴に堕ちて死亡したならば、優婆塞は不可悔の殺人罪を犯す。もしその者がすぐには死亡せず、後になってやはりそれによって死亡したならば、優婆塞は同様に不可悔の殺人罪を犯す。もしその者がすぐには死亡せず、後にもそれによって死亡しなかったならば、優婆塞は中罪可悔の殺人罪を犯すことになる。
原文:人のために煙の出ない火の穴を作り、人が死んだ場合は不可悔。非人が死んだ場合は中罪可悔。畜生が死んだ場合は下罪可悔。
釈:他人のために煙の出ない火の穴を作って人を殺害する場合、もし人間が火の穴に堕ちて死んだならば、不可悔の殺罪を犯す。もし非人が火の穴に落ちて死んだならば、優婆塞は中罪可悔の殺罪を犯す。もし畜生が落ちて死んだならば、優婆塞は下罪可悔の殺罪を犯す。
なぜ同じ一つの火の穴で、異なる衆生が落ちて死んだのに、優婆塞の獲る罪が異なるのか。第一に、衆生の身分や種別が異なり、福徳が異なり、自身の価値が異なるため、死後の損失が異なり、殺害すれば当然獲る罪も異なるからである。人は非人より尊く価値があり、非人は畜生より尊く価値がある。人を殺せば獲る罪は最大であり、畜生を殺せば獲る罪は最小である。価値とは、世間に対して成し得る貢献の大きさ、衆生に対する利益の大きさ、自身が得られる世間および出世間における成就の大きさを指す。第二に、優婆塞の目的と心構えが異なり、故意であるか過失であるかで獲る罪が当然異なるからである。優婆塞が殺そうとする目標が人間であり、人に対して殺意を持っているならば、人が死んだ場合の罪は重い。彼の目標が非人や畜生ではなく、非人や畜生に対して殺意を持っていないならば、非人や畜生が死んだ場合は誤殺に属し、罪は軽い。
原文:非人のために穴を作り、非人が死んだ場合は中罪可悔。人が死んだ場合は下罪可悔。畜生が死んだ場合は下可悔罪を犯す。もし畜生のために穴を作り、畜生が死んだ場合は下罪可悔。もし人が堕ちて死んだ場合、もし非人が堕ちて死んだ場合、皆下罪可悔を犯す。
釈:もし非人のために作った煙の出ない火の穴で、非人がそれによって死んだならば、優婆塞は中罪可悔の殺罪を犯す。もし人間が落ちて死んだならば、下罪可悔の殺罪を犯す。畜生がそれによって死んだ場合も、下罪可悔の殺罪を犯す。
もし畜生のために煙の出ない火の穴を作り、畜生がそれによって死んだならば、可悔の下等殺罪を犯す。もし人が落ちて死んだ場合、非人が落ちて死んだ場合は、皆可悔の下等殺罪を犯す。
非人を対象に火の穴を設置するのは、非人を殺そうとする意図があるが、非人の身分が十分に尊くなく、道器(仏法を修める器)ではないため、非人を殺害しても犯すのは中罪可悔であって、上等の最重である不可悔の罪ではない。一方、もし人間が不意に火の穴に落ちて死んだ場合は、下罪可悔を犯す。なぜなら優婆塞は人を殺そうと思っておらず、人が自ら誤って火の穴に入った結果であり、優婆塞は堕ちる火の穴の便宜を提供したに過ぎないからである。もし畜生が誤って火の穴に入って死んだならば、なおさら下罪可悔である。もし畜生を殺そうとする意図があった場合、結果としてどの種類の衆生がそれによって死んでも、皆下罪可悔である。なぜなら畜生は十分に尊くなく、また道器でもないため、殺害は下等の罪であり、人や非人は誤殺に属し、これも下等の罪だからである。
原文:もし優婆塞が特定の一事のために穴を作るのではなく、来るものすべてを堕ちて死なせようとする場合、人が死んだら不可悔を犯す。非人が死んだら中罪可悔。畜生が死んだら下罪可悔。全く死ななかった場合は、三方便可悔罪を犯す。これを煙の出ない火の穴による殺害という。
釈:もし優婆塞が特定の種類の衆生のためにではなく、心では火の穴に来るものすべてを一律に殺そうと願って煙の出ない火の穴を設置した場合、もし人間がそれによって死んだならば、不可悔の殺罪を犯す。もし非人がそれによって死んだならば、中罪可悔の殺罪を犯す。もし畜生がそれによって死んだならば、下罪可悔の殺罪を犯す。もし全く死ななかったならば、優婆塞は三方便可悔罪を犯す。これが煙の出ない火の穴を設置する殺罪の状況である。
火の穴を設置するのは、通りかかるすべての衆生、人間を含めて殺そうとする意図、つまり人を殺そうとする意図があるため、人が死ねば上等の不可悔罪を犯す。非人や畜生を殺そうとし、非人や畜生が死ねば、中罪や下罪の可悔罪を犯す。三方便とは、三種類の衆生を殺すために煙の出ない火の穴を設置したことを指す。
2
+1