意根の捨受

捨受は苦楽の受を感じない受であり、意根が捨受であると言うことには一定の道理があります。意根は身触に対しては捨受であり、六塵の境界を直接感受することはありません。色身がどのような痛みを感じても、意根は痛みを感じることはありません。痛みを感じるのは身識と意識であり、身識と意識が存在しない時、色身は痛みを感じなくなります。例えば手術の際、身識と意識が存在すれば人は覚醒しており、必ず激しい痛みを感じます。痛覚を滅除するためには麻酔薬を用い、まず身識を滅し、次に意識を滅すれば、色身を切開しても痛みを感じなくなります。

歯痛の場合、眠りに就いて六識が滅すれば痛みを感じなくなりますが、歯の炎症は依然として存在しており、目覚めれば再び痛みが続きます。時には夜中に痛みで目覚めることもあります。なぜ夜中に痛みで目覚めるのでしょうか。昏睡状態では身体が深刻な状態にあっても痛みを感じませんが、目覚めると耐え難い痛みを感じます。地獄で報いを受ける際、痛みで気絶して初めて痛みを感じなくなりますが、業力は罪人が気絶することを許さず、業風が吹けば罪人は再び意識を取り戻し、報いを受け続けます。禅定中も痛覚は軽減あるいは消失します。これは六識が消失するか微弱化するためです。

したがって痛覚は身識と意識が共に体験する覚受であり、意根にはそのような覚受はありません。仮にあったとしても、意識はそれを知覚できず、観察することもできません。衆生は皆六識の覚受をもって覚受としています。六識が滅するか微弱化する時、意根がどのような覚受や心理状態にあっても、意識はそれを知ることができません。知ることができないため、意根には何の感受もなく、心の働きもない、あるいは意根は単純で智慧が浅いと考えます。

意根の機能作用が強大化して六識に代わる時、全ての覚受は意根のものとなります。しかしこの時、意根の禅定と智慧の修養は既に非常に優れたものとなり、ほとんどが捨受で情緒の波動は見られません。一般の衆生の意根には依然として苦楽の受があり、捨受だけではありません。意識に似た心理的覚受、つまり屈辱感や抑圧、煩悶、憤り、喜び、楽しみ、興奮など、情緒の波動が大きく生じるため、怒りが天を衝き、手踊りし、喜びを顔に表すといった情緒的表現が現れるのです。