口先だけの禅は修行と実証ではありません

悟り以前の修行には多くの次第があり、悟り後の修行にも同様に多くの次第がございます。悟り前に悟り後の方法で修めようとするのは徒労に終わります。未だ門に入らざる者が、門内の務めを成すこと叶わぬが故でございます。開悟したばかりの方、あるいは未だ悟らざる方が、地上菩薩の如き修行法に従おうとするならば、更に効果を得難きこと必定でございます。高遠な理論を手に抱え、自らが既に実証し聖人や如来蔵の如く成り得たと考えるは、全くの自欺に他なりません。多くの者が「煩悩即菩提」との言葉を見て、煩悩を如来蔵の幻化と看做すことが即ち修行と等しいと思い込み、煩悩を調伏する方法を求めず、結局煩悩は煩悩のままで菩提は菩提のまま、死後も尚生死に沈淪するならば、何の益がありましょうか。

或る者は如来蔵に修も証も無きことを悟り、七識五陰もまた修証無きべきと錯覚し、ならば如来蔵も本来仏である故、自宅にて仏を為すが宜しきと考えるのでございます。或いは一切の法は分別より生ずると聞き及ぶや、分別を止めんと欲し、ただ分別せざれば心は空じて法無しと解し、如来蔵が分別せざる故に自らも分別せず、ならば七日飢えても何ら異議無かるべしと考えるのでございます。

一切法は確かに幻化の如きものではございますが、これは十住位以上の菩薩の修行証量でございます。もし自らがこの修行の境地に達せず、未だこの実証量を具えざるならば、日々幻化の言葉を口辺に掲げて口頭禅と化すべきではございません。如来蔵は戒を持たざる故、或る者は自らも如来蔵の如く戒を持つ必要無しと考え、任運逍遥に身を委ね、形骸を放浪するのでございます。己が心に貪瞋痴を具足することを知らざる者が、如何にして形骸を放浪し任運逍遥できましょうか。空論は往々にして国を誤り、一丈を説きて一寸も行じ得ぬ者は、堅実に実際の修行を積むが最善でございます。高談闊論を重ね、目高く手低きを改めねばなりません。