高齢者は脳の萎縮により勝義根が弱まり、六識の機能に影響が及びます。具体的な影響としては、例えば新しい人物と出会った際に一時的には覚えていても、後になると忘れてしまうことが挙げられます。これは意識の記憶力が衰えているためです。では意根の機能は影響を受けるのでしょうか。意根そのものの機能は損なわれませんが、六識と連動する機能は六識の影響を受け、脳や勝義根の影響は受けません。高齢者がその人物と接する際、印象が意根まで深く届かず、意識の表層に留まるため、後になって忘れてしまうのです。
一方、高齢者が親族の甲に対して深い印象と記憶を保持し、心から気にかけている場合でも、甲に会った際には内心では明らかに甲と認識しながら、口に出す際に誤って乙の名前を呼び、甲に関する事柄を話すことがあります。これは意識が混乱しているためで、意根には問題がありません。人は年を重ねるほど勝義根の機能が弱まり、意識が混濁していきます。意根自体は明晰であっても、身口意の行為は意識と五識が共同で形成するため、様々な混乱や障害が生じるのは避けられないのです。
仏道修行において功徳を無駄にせず修行の成果を保持するためには、どのように実践すべきでしょうか。意識の表層での理解・思惟・分析・暗記に留まらず、禅定を修得し、禅定の中で思惟を深め、学んだ教えを意根の心に浸透させなければなりません。そして禅定の中で意根に思量させ、現量の実証に至らしめるのです。意根を多く用いることによってこそ真実の智慧が開花し、その智慧は絶えることなく増長し、来世へと継承され、生滅を重ねる中で活用され続け、ついには仏陀としての完成に至るのです。
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