推敲に秘められた心所法

「推敲」という言葉は、唐代の詩人賈島が詩を作った故事に由来し、元来は賈島が詩作において言葉選びや句の推敲を行う際の思考様式と努力の状態を描写したものである。詩人は適切な言葉を探すため、心の中で絶えず言葉を検索し、その詩が表現しようとする意境を表すべく、身振り手振りを交えて推敲を重ねた。最初は意識による推敲・尋伺から始まり、次第に意根（マノ・ヴィジュニャーナ）による推敲・尋伺へと移行する。意根の推敲・尋伺は極めて微細で隠微なため、意識が動かず思考が停止したかのように見え、あたかも禅を参究するがごとき状態となる。

賈島が詩句の推敲に没頭していた際、どのような心所法（心の作用）が現れていたか。五遍行心所法（普遍的な心の作用）と五別境心所法（特定対象への心の作用）、おそらく善心所法と煩悩心所法も存在したであろう。推敲時にはまず、推敲の対象となる法（ダルマ）に対して作意心所法が生起し、心を推敲対象へと導く。次に触心所法が現れ、心が推敲対象に接触する。受心所法が生じて推敲対象を受け入れ領納し、想心所法が起こって推敲対象を認識し執着し、思心所法が現れてその法を絶えず思量し、最終的に理解・確定するに至り、その後続の行為へと移行する。手振りで「推す」と「敲く」動作を行う際には、五識と五俱意識に伴う五遍行心所法も生起した。

作意の際には心が比較的集中し、意識と意根が対応する法に集中するため、受心所法の生起は他の場合より少なく、脳裏では思考問題が巡らされている。推敲過程で特に意根が敏感に反応する情景に触れた場合、受心所法が生じる可能性がある。この受は外界の六塵（感覚対象）の変化によるものではなく、心の触発と感受である。受心所法の本来の意義は「受け入れる」「納得する」「領受する」ことにあり、問題を受け入れ領納しなければ、その問題を思考し続けることができず、思の結果も生じず、決断や後の造作（形成作用）もなく、智慧の生起もない。

想と思の過程には常に定心所法が随伴する。また勝解心所法も存在し、勝解とは法の大まかな意味を正しく理解した状態、つまりおおよその理解を得て、思考対象の法に対して比較的合理的な解答・見解・観念・結論を導き出したことを指す。推敲過程には欲心所法・念心所法・定心所法も生起する。欲心所法は推敲しようとする意欲であり、第六識（意識）と第七識（末那識）を駆動して推敲を進め言葉を選び句を練らせる。勝解後に語義に対する念心所が形成され、推敲に専注する状態が定心所の功徳である。