ある事柄に遭遇した時、即座にその成り行きを悟り、言葉や音声を介さず瞬時に心に明らかとなるのは、意根の智慧であります。これは極めて観察し難く、一般の人々には理解できぬものでございます。一方、事柄に直面して直ちに理解できず、思惟分析や帰納整理、比較想像を経て初めて知るのは、意識の智慧であります。意識は言語文字や音声を用い、表面的な思惟作用を働かせるため、この部分の作用は観察しやすいのでございます。
何故事柄によって即座に理解できるものとできないものがあるのでございましょうか。事が発生するやいなや、意根が注意を向け触受想思をなします。意根は非常に慣れ親しんだ事柄、過去に経験した事柄については即座に理解し、自動的に処理対応を執り行うことができます。しかし未経験の事柄については即座に理解できず、思量を重ねても判然とせぬ時、意識を生起させて弁別思惟をさせ、意根は意識の分析結果に基づき再考を加え、その後処理対応を致します。意識の作用は意根の弁別を補助するものであり、意根自らが事柄を明瞭に把握している場合、意識による弁別思惟を必要とせず、直ちに決定を下し、迅速に事柄を処理対応するのでございます。
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