瑜伽師地論第二十九巻(三)
原文:また彼の一切の悪不善法は、或いは過去の事を縁として生じ、或いは未来の事を縁として生じ、或いは現在の事を縁として生ず。かくの如き彼の法は、或いは現見せざる境を縁とし、或いは現見する境を縁とする。もし過去未来の事境を縁とするならば、これを現見せざる境を縁とすると名づく。もし現在の事境を縁とするならば、これを現見する境を縁とすると名づく。
釈:すべての悪不善法は、あるいは過去の事柄を縁として生じ、あるいは未来の事柄を縁として生じ、あるいは現在の事柄を縁として生ずる。それ故に悪不善法は、現前に見えない境界を縁とするか、現前に見える境界を縁とする。過去と未来の境界を縁とするならば、現前せざる境界を縁とすると言い、現在に現れる境界を縁とするならば、現前する境界を縁とすると言う。
原文:当に知るべし、ここに現見せざる境を縁とする悪不善法において、未だ生ぜざる者を生ぜしめざらんことを欲し、已に生じたる者を永く断たんことを欲して、自らを策励すること、これを策励と名づく。現見する境を縁とする悪不善法において、未だ生ぜざる者を生ぜしめざらんことを欲し、已に生じたる者を永く断たんことを欲して、勇猛に正勤すること、これを発勤精進と名づく。何を以ての故か。必ず当に堅固に自らを策励し、勇猛に正勤して、方能く彼をして或いは再び生ぜず、或いは永く断滅せしむるを得ばなり。
釈:現前せざる境界を縁とする場合、未だ生じていない悪不善法を生じさせず、既に生じたものは永く断滅させるため自らを戒め励むことを策励という。現前する境界を縁とする場合、未だ生じていない悪不善法を生じさせず、既に生じたものは永く断滅させるため勇猛に修行精進することを発勤精進という。なぜなら、堅固な自戒自励と勇猛精進によってのみ、悪不善法を再び生じさせず、永遠に滅却できるからである。
原文:また下品・中品の諸纏において、未だ生ぜざる者を生ぜしめざらんことを欲し、已に生じたる者を永く断たんことを欲して、故に自らを策励す。上品の纏において、未だ生ぜざる者を生ぜしめざらんことを欲し、已に生じたる者を永く断たんことを欲して、発勤精進す。またもし過去の境界を行ずる時、かくの如く行ずるに、煩悩をして彼を縁として生起せしめず、設い失念して暫時生起するも忍受せず、速やかに能く断滅し、除遣変吐す。過去を縁とするが如く、未来を行ずるもまた然るべし。かくの如く未生の悪不善法を能く不生ならしめ、生已に能く断つ、これを策励と名づく。
釈:下位・中位の煩悩の束縛については未生のものを生じさせず、既生のものは断滅させるため自らを戒め、上位の煩悩については更に精進する。過去の境界を思惟する際、煩悩を生じさせず、仮に生じても直ちに除去する。未来の境界に対しても同様に扱い、未生の悪を防ぎ既生の悪を断つことを策励という。
原文:もし現在の所縁境界を行ずる時、かくの如く行ずるに、煩悩をして彼を縁として生起せしめず、設い失念して暫時生起するも忍受せず、速やかに能く断滅し、除遣変吐す。かくの如く未生の悪不善法を令めて不生ならしめ、已に生起したるものは生已に能く断つ、これを発勤精進と名づく。
釈:現在の境界に対処する際、煩悩を生じさせず、仮に生じても直ちに断滅させる。未生の悪を防ぎ既生の悪を即座に断つことを発勤精進という。
かくの如く四正勤を勇猛に修行し、自らを戒め励むならば、煩悩は速やかに除かれ、心清浄となり見道を得て智慧解脱に至る。もし煩悩の害を悟らず放任すれば、輪廻の苦しみは除かれず、聖道を証すること叶わない。これにより、煩悩を断たずして菩提を証することは不可能なり。
回向文:当ネットワークプラットフォームにおける全ての弘法と共修の功徳を、法界の衆生に回向し、世界の民衆に回向す。世界の平和を祈願し、戦争起こらず、烽火興らず、干戈永遠に息むことを。一切の災難ことごとく消退せんことを。各国人民の団結相助け、慈心相向かんことを。風雨順い時をなし、国泰く民安んぜんことを。一切衆生に因果を深く信じ、慈心をもって殺生せず、善縁を広く結び、善業を修め、仏法を信じ学び、善根を増長し、苦を知り集を断ち、滅を慕い道を修め、悪趣の門を閉じ、涅槃の路を開かんことを。仏教の永き興隆と正法の永住を祈り、三界の火宅を極楽の蓮邦となさんことを。
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